事件が起きた

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事件が起きた

凛と趣味、主にゲームの話をしながら帰る。 家まで送ると言われたが、それは断った。 じゃあ、分かれ道まで、と。 「またね」 「ああ、じゃあな」 軽くハグされる。 「ほっそ、ちゃんと食べろー」 「うるさい!」 食べてるけど肉が付きにくい体質なの! 押し返して、距離をとる。 じゃあね、と一言いって家へと向かう。 家に帰ると、リビングに母だけがいた。 「あれ、…翔義兄は?」 ぶっちゃけ、顔は合わせずらいけれど。 翔義兄が付き合ってると知った後だし。 自分はブラコンかもと気づいた後だし。 「まだ帰ってきてないわよ」 ほっとするような、もやもやするような。 自室で気を紛らわすかのようにスマホでYoutubeを観る。 ゲーム実況だ。 プレイするのも見るのも好きだから。 すると、ピコンと通知が来た。 凛からだった。 チラッという可愛い猫のスタンプ。 『なにー?』 『日曜予定ある?』 『ない!』 嫌な予感がする。 『デートしようぜ』 『…いいよ』 一週間期間限定の恋人として最後の務めを果たす。 俺は凛のことを振って、元通りの親友に戻る。 この恋人(仮)が無事終われば親友に戻ってくれる約束だし。 俺が惚れたりしなければいいだけ。 凛に親友以上の気持ちを抱いた事なんてないし。 これからもない。 ご飯と風呂を済ませ、布団を被る。 もう寝よう。 俺はどんな所でも何があっても大抵はすぐ寝ることが出来る。 睡眠欲が強い体質なのか。 眠っている時が一番幸せだ。 この状況が不幸だとは思ってないけど、ただただ好意が痛い。 凛を振ると決めているが、ぶっちゃけ辛いし。 案外繊細なあいつは絶対傷つく。 明日は金曜日。 俺は事件に自分から首を突っ込んでいく。 そして、それを後悔することになるのだが、今の俺はまだ知らない。 朝、母さんに起こされやっと起きる。 寝るのは簡単に出来るのだが、自力で起きるのは難しい。 母さんか目覚まし時計の力を使わないと。 母さん情報によると翔義兄は生徒会で早めに学校へ行ったそう。 聞いてもいないのに教えてくれた。 朝遅く学校に着く。 げっ。 体育教師が服装検査している。 あの先生怖いからなー。 まあ、自分で言うのも何だが俺は真面目だし大丈夫だが、凛が怒られる様子が目に浮かぶ。 心の中でご愁傷さまと唱える。 難無く通ることが出来た。 教室に入ると凛が突っ伏している。 「よっ!その様子だと結構怒られたようだな」 「……そうだよ、朝からマジだるいって。昼休み呼び出されたしさ」 じゃ、凛と昼一緒でなくていいのかとほっとする。 付き合う(仮)の甘い雰囲気が何となく居心地悪い。 昼休み。 1人で昼食をとった後、トイレに行こーと席を立つ。 何気なく窓の外を見る。 今日も快晴!いい天気! 途端バシャーと大量の水が降ってきた。 「は?」 思わず声が出てしまう。 外にはずぶ濡れになった女生徒。 花壇の手入れをしていたのだろう。 如雨露を手に持っている。 窓枠に足をかけ外に出る。 ここは1階なので、難無く出ることが出来た。 「大丈夫か!?」 くすくすという声が頭上からする。 3人組の女だった。 水を掛けた張本人はというと、口の端をあげて 「調子乗んな、ブス」 と吐き捨てて逃げていった。 「お前らこそ自分の顔みてみろ!」 3人組の女、顔は覚えたぞ! 周りがザワザワとし始める。 まるで見世物だ。 ずぶ濡れになった女生徒をなんとかしないと。 自分の上着を女生徒の頭にかけて、周りから見えないようにした。 「あ、ありがとうございます……」 「見られたくないでしょ。早く保健室へ行こう」 腕を引っ張ってその場から立ち去った。 保健室に着くと、案の定着替えさせないとと保険医から、体操着を持ってきてとお願いされた。 教室は3年A組だそう。 3年といえば、翔義兄と一緒……って!あ! あのずぶ濡れの先輩、翔義兄の彼女に似てるんだ。 教室に着くと、翔義兄が居た。 あと、あの水を掛けた3人組も。 事情を把握しているのか、凄く怒っていた。 こんなに怒っている翔義兄は初めてで、驚いた。 近くにいた上級生に、赤坂雫の体操着を持ってきて貰って、さっさと退散しようとしていた所。 「恋。俺も行く」 やっぱり気づかれているよな。
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