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事件後
俺も行くと言ったら、恋は表情を強ばらせていた。
気まずいと思っているのだろう。
「あー、そのあんなに怒っている翔義兄、初めて見た」
「大事な彼女だからね」
「やっぱり、そうなんだ。……彼女ならちゃんと守ってあげないとだもんね」
結局赤坂さんのことは守ってあげれなかった。
話を聞いた後には既遅し。
水を被ってしまって、保健室にいたのだから。
馬鹿なことを仕出かした3人組の女生徒を怒っただけ。
何も出来なかった八つ当たりともいえる。
実際に守ったのは1年生と聞いていたが、まさか恋だとは思わなかった。
俺の事情に関わらせてしまうと虐めもあると予想して、手出しができないよう出来るだけ一緒にいたり、変わったことがあったら報告するようにしていたのに。
くそっ!
「守れなかったよ、俺は…。恋なんでしょ、赤坂さんを保健室へ連れて行ってくれたの」
「うん、そうだけど…。悪いのは虐めた奴でしょ。なんで翔義兄が自分をそんなに責めてるんだよ」
「……」
そんなことにはすぐ気づく癖に。
あー、なんで恋や愛には鈍感な恋を好きになってしまったんだろ。
そんなことを考えてると、保健室に着く。
3階から1階まで地味に遠い。
「赤坂さん大丈夫……っと」
俺と恋の姿を見た瞬間ふらりとした赤坂さんに急いで駆け寄る。
冷たい体を支えた。
とうとい…とか言っていたが、なんの事だろうか。
「た、体操着持ってきたので、赤坂先輩急いで着替えてください!」
恋が口早に言う。
動揺している、気がする。
赤坂さんの容態を心配してくれているのだろう。
カーテンで遮ってあるが、一応俺たちは背中を向けて着替え終わるのを待ちながら話す。
「赤坂さん、ごめんね。俺のせいでこんな目に…」
「いえっ、この様な体験一生出来ないと思っていたので、謝ってもらう必要はないというか」
「……?」
こんな体験したら、凹んでもいいくらいなのに。
水を被り、一時でも周囲の目に晒されて…。
ううん、実は凄く凹んでいるのかもしれない。
明るく振舞ってくれている気がした。
「ありがとうね」
「お礼を言われる様なことなど何も…あっ着替え終わったので…」
体操着に着替えた赤坂さんは、保険医からベットに横になって休むよう指示されていた。
それから、俺たちにはすぐ授業を受けるように、と。
「……」
恋が黙り込んでいる。
「どうし「っ俺、もう授業だから行く!」」
恋のことは諦めると決意しているから最低限話さないでおこうと思うけれど、体調が悪いとかだったのなら別。
恋が死んだら、生きる意味がなくなるからね。
だから聞いておこうとしたが、言い逃げられてしまった。
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