10人が本棚に入れています
本棚に追加
転校生
凛の席を見るともう着いていた。
遅刻ギリギリではないとは、珍しい。
凛のことは振って傷つけたけれど気になるし、時間がかかってでも元の親友に戻りたいと思っている。
この気持ちは変わらないと思う。
ホームルームが始まる。
「えー今日は転校生を紹介する」
教室がざわつく。
転校生か……、珍しいことは立て続けに起こるようだ。
「静かに!……入ってきていいぞー」
「始めまして!海崎瑠衣です~。先に言っておくと海崎凛の従姉妹です。よろしくお願いします~」
間延びした可愛い声。
凛の従姉妹なのか……!
よく見れば……似てないな。
ツンとしてないし、ヤンキーっぽい訳でもないし。
凛の方を見ると、特に驚いた様子なし。
知っていたんだろうな。
再び可愛く愛想の良い彼女に再びざわつく。
「席はーと、窓際1番後ろの席で」
俺の隣じゃん!
なんか騒がしくなりそうな予感しかしない。
「は~い、よろしくね。えーと」
「桜木恋だよ、よろしく」
「恋くんね、覚えた!私のことは瑠衣って呼んで」
「そこ、挨拶するのはいいがホームルーム終わってからにしろよー」
連絡事項が伝えられいく。
放課後は委員会だそう。
俺は保健委員だ。
今回も保健室で話し合いをするだけだろう。
この学校の保険医は話すのが好きでそれに時間を結構とられてしまう。
チラシづくりやポップは自身で作るのが好きみたいだし、手伝ってくれるより話してくれる方がいいんだとか。
ホームルームが終わると、瑠衣の周りには沢山の人が集まった。
「ねえねえ、前はどこ高だったのー?」
「好きな男子のタイプは!?」
「その髪型可愛い~」
などなど話し掛けられていた。
それに1つ1つ答えていく瑠衣。
本人は楽しそうだけれど、疲れそうでもあるな。
「あっ、私トイレ行くね~」
「案内しようか?」
女子の1人が申し出る。
「さっき先生に教えて貰ったから平気!また分からないことあったら教えてね~」
その場を去る。
俺もトイレ行っとこ。
廊下を出てトイレのまだ先の曲がり角から声が聞こえた。
あそこ、空き教室のはずだけど。
誰かいるのか、と興味本位で近づいたのが間違いだった。
机をガンガンガンとける瑠衣。
先程の可愛い声ではなく、ドスの聞いた声を出す。
「はあ~、まじで疲れるっ!!!……誰?」
思わず隠れようとしたところ、気づかれてしまった。
「あ~、恋くんだっけ?ストレス溜まるとちょっとね~、こうなっちゃうの。秘密だからね?」
にっこりと可愛い声で言う瑠衣とこくこくと頷く俺。
はああああ、女子って怖っ!
「じゃっ、教室行こ!」
ギュッと強制的に握らされた手は痛かった。
その体のどこにそんな力があるんだ。
教室の前まで行くと手を離す。
「遅いぞー、2人」
先生に軽く叱られる。
瑠衣と俺はそれぞれ席に着いた。
「桜木は海崎……あー、瑠衣の方な。見せてやって、教科書」
2人も海崎がいると面倒だなと文句を言う先生。
それにしても……あの光景を見た後だし、瑠衣のこと怖いな。
凛より怖いかもしれない。
凛は見た目が怖いだけで、キレやすくもなければ、暴力に走ることもない。
「見せてもらうね~」
「どうぞ……」
「ありがと!」
後日、この可愛くて怖い転校生と1波乱起きることになる。
最初のコメントを投稿しよう!