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積極的
翔と登校中ばったり瑠衣と会ってしまった。
あんま関わりたくは無い。
挨拶はクラスメイトとして勿論するけど。
「おはよう」
「……」
え?無視かい。
「……かっこいい」
「へ?」
頬を染めながら呟く彼女。
かっこいいって俺に言ったんじゃないんだろうけど、変な声が出てしまった。
「名前聞いてもいい?私は海崎瑠衣」
視線の先には翔。
距離を詰めて聞く瑠衣。
翔は1歩引いて一定の距離を保つ。
「……3年の桜木翔だよ」
「翔先輩!上級生なんですね~。恋くんと苗字が一緒ってことは兄弟ですか?」
「うん、まあ。今日日直だから先に行くね、恋。それから海崎さん」
「瑠衣、って呼んでください!」
それには答えず、翔は先を行く。
「超かっこいいね~、恋のお兄さん」
「……うん」
微妙な気持ちだ。
自分の彼氏がかっこいいと言われて嬉しい自分と嫉妬してしまう自分が2人いる。
「翔先輩って彼女いるの~?」
「彼女はいないけど……」
彼氏はいます、と言えなかった。
「じゃあ、アタックしちゃお~」
「え!は!?ちょ」
俺の戸惑いの声が聞こえないのか、先を歩いていってしまう。
憂鬱な気持ちで授業を受ける。
瑠衣とは同じクラスで隣の席だから否が応でも接することになるし。
うん、休憩時間に説得を試みよう。
授業が終わり瑠衣に話しかけようとするが中々1人にならない。
1人でトイレ行く時に後ろをつける。
絶対あの空き教室でストレス発散するんだろうなあと。
案の定、空き教室へ入った瑠衣。
「なぁに?恋くん」
「!」
「何か言いたいことでもあるんでしょ~?私の事チラチラ見てたじゃん」
気づかれていたのか。
それなら話が早い。
休憩時間が終わる前にさっさと本題に移ろう。
「あの、さ。翔のこと諦めて欲しいんだけど!」
「はあ?なんで恋くんにそんなこと言われなきゃいけないの」
可愛い声は何処へやらで、ドスの効いた声を出す瑠衣。
この豹変の仕方、いつも思うけど怖い。
「それは……」
口ごもる。
俺が彼氏だから、と言っていいものか……。
言いふらされでもしたら、翔困るよな。
「ふ~ん……恋くんも翔先輩のこと好きなんだぁ?」
「……!」
早速彼氏とまではいかないけれど、好きってことがバレてしまった。
「私に翔先輩とられるかもって嫌なんでしょ」
今更誤魔化しても仕方ないので……そうだよと頷く。
「でも!恋愛は自由だよね~。恋くんに私を止める権利なんてないし、翔先輩にアタックするから」
「……っ」
何も言えずにいるとチャイムが鳴る。
取り敢えず急いで教室に戻った。
瑠衣を止めようとしたが、結局翔にアタックする宣言されただけで終わった。
翔が俺を振るとは思わない、てか思いたくないけど、万が一瑠衣に揺らいだらどうしよう。
俺も積極的にいくべき?
それとも彼氏らしくドンと傍観してればいいかな……。
うーーーん。
1番は瑠衣を止めれたら良かったんだけど、無理だったし。
……瑠衣が翔にアタックするというなら、俺も積極的に行動しよう。
とっても仲がいいとこを見せつければいい。
そして、翔も俺に想いを寄せてくれてるということが分かれば、察して身を引いてくれるだろう。多分。
昼。
翔と昼食をとろうとクラスに突撃する。
「あっ!恋くんだ~」
瑠衣……さっきまで一緒の教室にいたのになんで先にいるわけ。
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