怖い人

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怖い人

九重先生の姿が見えなくなってから瑠衣が口を開く。 「ちっ!なんで来たのよ、あいつ。てか、その手離せば」 確かに。もう九重先生からは遠ざかったし、凛の腕を離しても大丈夫だ。 ぱっと凛の腕を話す。 「凛と瑠衣は怖がってたけど、そんなに怖い人なのか」 「怖いに決まってるの、私たちは。だってあの人に虐められていたんだから!」 凛と瑠衣が? 凛の方を思わず見ると、顔をそらされた。 「……本当なら、俺が直接言う。凛と瑠衣に近づくなって」 「恋は!関わらなくていいから!」 これまで黙っていた凛が声を上げる。 「でも」 「関係ないだろ。俺はもう親友だと思ってない」 ズキっと胸が痛む。 凛が親友だと思っていなくても、俺にとって凛は親友だし、助けたい。 これって俺のエゴだよね。 「分かった。じゃあ帰る」 俺は凛ではなく翔を選んだのだから、自分勝手に行動するのは良くない。 勝手に凛が望んでいないのに行動するだなんて。 助けたいという気持ちは勿論あるけど。 2人と別れて、帰路に着く。 「……おかえり、恋」 暗い面持ちの翔。 そうだ、今日学校で付き合っていることを再度打ち明けようとしたら、翔が遮ったんだった。 「ただいま」 俺と付き合うのが翔にとってそんなに恥ずかしいことなのか、聞こう。 「翔、あのさ……」 「恋、話が」 丁度声が被ってしまう。 「翔から言って。多分同じことだし」 「うん、俺たちが付き合っていることは秘密にしといた方がいいと思うんだ」 「なんで?」 「恋が傷つけられる可能性が高いから。赤坂さんと付き合った時に水掛けられてたの、恋もその場で見てたでしょ」 「……俺と付き合っているのが恥ずかしいからは一切ない?」 「は?ないに決まってる。俺は恋が傷つくことが「良かったぁー!」」 翔の言葉を遮り、安堵の言葉を口にする。 俺が傷つくことが怖いだけだったなんて。 「そんなの、全然平気。翔が付いてるし」 「俺はいつでも助けれるヒーローじゃないんだけど」 「それでも!俺は平気だって。翔が傍にいてくれるならね」 軽く言うと胡乱げな目をして見てくる翔。 「……恋の平気は信用ならない。付き合っていることは絶対秘密にする。知られるにしても、自分たちから広める必要は無いでしょ」 「それはそうだけど」 「じゃあ、付き合っていることは秘密にしていく方向で、ね?」 翔の圧力を感じる笑顔でこの話は打ち切られた。 その後、夕食を取りお風呂に入って布団に入った。 あーー。 明日から不安だ。 瑠衣から話を聞いた限りなんか厄介そうな匂いするし。 凛と瑠衣が虐められていたって話が本当だったなら、また何かされるかもしれない。 だけど凛からは関わらなくていいからって言われたから、俺は手出し出来ない。 はあと心の中でため息をついて眠りに入った。 次の日、俺は強制的に巻き込まれることとなる。
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