マック

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マック

授業が終わると、同じクラスで親友の凛が俺の席に来た。 「帰り、マック寄ろうぜ!」 そういえば最近凛とどこかへ行ったりしなかった。 テスト週間の後、俺が事故に遭って病院行ったりしてたから。 義兄が来る前にさっさとマックへ行こう。 「ああ」 そう言ってクラスを出ようとすると、義兄がいた。 えっ、さっきホームルームが終わったばかりなのに、はやくない? 「恋、迎えに来たよ」 キラキラ笑顔で近くにいた女子たちを魅了する。 凜を見やるといつも以上に鋭い目を義兄に向けていた。 敵対視でもしているのだろう。 優等生と言っても過言ではない生徒会長の義兄と校則ギリギリをせめるヤンキーぽい凛。 馬が合わないのは当然のことといえば当然。 義兄は凜がいることをスルーして、俺に話かける。 「もう帰りだよね」 「そうだけど……今日は凜と帰るから」 「ということで帰ってもらえますか、先輩?恋のことが心配なら俺がちゃーんと送り届けますから」 俺は小さい子供か。 義兄はやっと凛を冷え切った目で一瞥する。 「ああ、全然きづかなかった。ごめんね?」 いつも温厚な義兄にしては珍しい嫌味な言葉だ。 そんなにヤンキーなどの不良に厳しかったっけ。 いや、ヤンキーにも生徒会長様と拝められていたはず。 凜にだけ冷たいのは何故? そもそも俺が事故に遭って、義兄がおかしくなったのが原因なんじゃないか。 まあ、だからといって親友の凜を傷つけるような言葉を口にしたのは許せないけれど。 「翔義兄さん、最近なんかおかしいよ。俺、凜と帰るから!」 凛の腕を引っ張って、廊下を早足で歩く。 「恋!」 義兄の呼び止める声が聞こえるが、スルーする。 義兄が正常な状態に戻るまで距離をとろうかと考える。 校門を出たところで、凜が手……と呟いた。 何故か耳が赤い。 「ああ、ごめんっ。無理に腕、掴んだりして」 「っいや、そんなことよりもお前、大丈夫か?」 眉をひそめて心配そうに聞いてくる凛。 「あー、俺は大丈夫なんだけど、凜も見た通り翔義兄さんが過保護になっちゃって」 「過保護……、あれはどうみてもってまあ、恋が鈍いのは前から知ってるけどここまでとはな」 若干呆れ気味の凜に俺は首を傾げる。 「んー、何の話?」 ポテトとバーガーを注文した俺は、ポテトを口にくわえて聞く。 俺が鈍い?それが義兄と何か関係があるのか。 「その仕草、あざといしなー」 これだから恋はーという目で見られる。 俺なんもしてない、ポテトを食っているだけ。 てか、久々のマックのポテト、旨いな。
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