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熱
帰路に着くと、真っ先に自分の部屋に駆け込む。
顔が火照っている気がして。
ベットにダイブして、枕に顔を埋める。
「あーーー!もう!凛が俺を好きとかなんなんだよ!……親友だと思っていたのにさ」
凛は1番の親友だった。
良い奴だ。
だけど、だけど、だけど。
恋愛対象としてみるのは無理!
一週間付き合えばいいだけだ。
それで俺が惚れなければいい。
そしたら、元通り、のはず。
「恋、ご飯よー!」
「っはーい!」
もう答えは出てるんだから、悩むの一旦やめ。
リビングに行くと、兄が既に座っていた。
「いただきます」
義父は仕事なので、三人で食べることが多い。
話すのは他愛のないこと。
今日も話すことが好きな母が話題を振る。
「そういえば、今日の朝、翔くんが先に出たと知ったら、寂しそうにしてたわよ」
「え、」
「ちょっと、母さん!俺一言もそんなこと言ってないけど!」
「顔に出やすいもの、恋は」
ぐぬぬ。
反論できない。
実際、朝はその事が気にかかって、凛に愚痴ったくらいだし。
「本当…?恋」
義兄が俺が答えるのを待っている。
欲しい答えがある、みたいな目。
「急に離れるから、ちょっとね。気になっただけ」
「気にしてくれたんだ…」
「だって、家族じゃん」
翔義兄が最後の一言で沈んだ。
「家族ね…」
そう呟く義兄。
もしかして、この言葉好きじゃないのだろうか。
違う言い方をすれば良かったかな。
不穏な空気を察したのか、母が別の話題を振る。
「そうだわ、来週バレンタインじゃない!理久さんになんのチョコあげようかしら…」
理久さんとは、俺の義父だ。
再婚して経つが、未だにラブラブ。
弟か妹が出来そうなくらい。
「咲さんがくれるチョコなら、何でも喜ぶと思う」
「そうかしら?ありがとう、翔くん」
そんな会話をして、食事は終わった。
翔義兄がお風呂に入っている間、最近ハマっているソシャゲをしていた。
ゲームをしていると時間を忘れる。
気がついた時には、九時だった。
今日は遅いな…。
のぼせてるんじゃ…。
翔義兄に限ってそれは無いと思うけど、様子を見てこよう。
シャワーの音が聞こえる。
のぼせているわけではなさそう、と思った瞬間、ドンという鈍い音が聞こえた。
「翔義兄!?」
慌ててドアを開く。
翔義兄はというと、壁にもたれかかっていた。
息は荒く、顔は火照っている。
「近づ、かないで」
は!?
お湯から水になっているシャワーを止める。
って、水…を浴びてた?
「馬鹿義兄!なんで水なんか…ほら、肩貸すから」
「恋、濡れる…」
「そんなこと…!」
無理やり自分の肩に翔義兄の腕を絡ませる。
う、重っ!
自分より背、高めだから、予想はしていたけど…。
「…」
頬に柔らかく、温かい感触を感じる。
翔義兄との顔の距離が近過ぎることに気付く。
これは…キス?
いやいや、ぶつかっただけだろう。
「翔義兄、階段登れる?」
「恋は、意識してくれないんだね」
「なんのこと?それより」
「登れる、介抱してくれてありがと…」
腕を振り払うように、フラフラと登って行く。
心配だ。
そうだ、義父を呼べばいいのか。
義父は肩をかそうとしていたが、結局自力で階段を登ってしまった。
母もあとへ続き翔義兄に大丈夫か、いるものはあるか問うていた。
母が看病している様子を見て、自分にも出来ることは無いかと考える。
看病って何すればいいんだ…?
ご飯は済ませたし、額に濡らしたタオルを乗せるとか。
「母さん、僕に看病を手伝わさせて欲しい」
「…じゃあ、そばに居てあげて」
「…うん」
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