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(……なんか、色々濃かった日だった……)
両手で顔を覆った凪が、記憶を蘇らせる。
慣れないスイートルームに、高級レストランのコース料理。
篤人との初入浴や、初めて一緒に迎えたイブで何度も抱かれて。
こんなに愛されていることを実感した恋愛が今までなかったから、愛に溺れるという意味が初めてわかった気がしていた。
体のあらゆる箇所を気持ち良くさせられて、甘い言葉を囁かれて。
もう自分の性格や理性なんてものが初めからなかったような、全てを篤人に捧げていた感覚。
誰かをここまで、好きで好きでたまらないと思う日がこの自分にも訪れるなんて。
篤人の存在自体が、人生も人間としても大きく変えてくれたことを感謝する。
(これが一生、続くなんてことあるのかな……。続くといいな……)
そんなこと信じ難いけれど、篤人とならそういう未来も信じてみたくなった凪が、隣で眠るの頬に優しくキスをする。
すると寝ているはずの篤人の口元が緩んで、ゆっくりと瞼を開いた。
「……不意打ちすぎるでしょ」
「あ、起きてたの?」
「……ついさっき、ね」
頬を赤く染めて初々しい反応を示す寝起きの篤人に、凪も不意打ちに胸の奥をキュンとさせていた。
昨夜はもっとすごいことをしておきながら、何故こんな軽いキスで頬を染めるのか。
そのギャップが、凪にとっては一番中毒性の高い篤人の魅力。
「篤人、おはよ」
「おはよう、凪……」
そうして当たり前のようにキスを交わし、微笑み合うと心が更に温まる。
すると、どこか申し訳なさそうに首根をかきながら篤人が話しはじめた。
「……本当は昨日渡す予定だったんだけど、タイミング逃しちゃって」
「え?」
「はい、クリスマスプレゼント」
そう言って篤人が枕元から取り出したのは、箱型のプレゼント。
手のひらサイズというよりは少々大きく感じるそれを、そっと凪に手渡してきた。
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