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鼻息を荒くして、興奮状態の凪がリビングに戻ってくると。
ふと視界に映ったのは、俊にお祝いしてもらいたくて準備していた、ご馳走とホールケーキ。
『ほんと凪ってドライだよな』
「これ見てから言えっての……」
確かに、嫌悪表現はすんなり出るのに愛情表現が下手なのは自覚していた。
だけど、それなりに俊に対しての想いはちゃんとあったし、今日だってキスもセックスもする予定でいた。
三ヶ月ぶりに恋人と過ごせることを楽しみにしていたのは、本当だから。
先に気持ちが冷めていた俊に言われる筋合いはないのに、とてつもなく悔しくて悲しくて。
だからベッドに突っ伏した凪は、大声が漏れないように枕に顔を埋めて叫んだ。
「わざわざ帰ってくんなボケー!」
誕生日に別れ話をされるくらいなら、簡潔に終わらせられるメールや電話対応の方が良かった。
加えてもう一つだけ、どうしてもむしゃくしゃしていたことは……。
「他の女と間違えて私の胸を揉むなー!」
そう叫んでピタリと動きを止めた凪は、ふと不安に駆られてゆっくり顔を上げた。
先ほど追い出した泥酔の男性があのまま家に帰らず寝てしまい、夜の蒸し暑さにやられて家の前で死んだりしたら。
自分は罪に問われるのだろうかと、急に怖くなったのだ。
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