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早速浴槽にお湯を溜めようとバスルームに向かうと、何故か篤人もそのあとをついてくる。
「な、なに?」
「俺も一緒に入ろうかな」
「えッ⁉︎」
「ほら、今日は特別な日だから」
そう言ってニコリと笑顔を向けてくる篤人は、凪の了解を得ずに服を脱ぎはじめた。
露わになっていく篤人の引き締まった体を久々に視界に入れると、徐々に胸が高鳴ってきた凪。
決して表情には出さないよう注意はしていたけれど、心の中では慌てふためき声をあげていて。
だけど今更篤人をバスルームから追い出すこともできず、仕方なく自分も静かに脱衣していくしかなかった。
(……お風呂に、恋人と入るのも初めてなんだけどッ!)
先程からなんとなく、気付いてはいた。
事あるごとに“今日は特別”というワードを乱用して、普段しないことをしたり凪のことを驚かせてくる篤人の言動に。
だけど、ずっと前から用意してくれていたことを考えると拒否するのも気が引ける。
篤人にも喜んでもらえるように、できることは何でもしてあげたいから――。
(……っ今日だけだからね!)
凪はそんな決意を抱き、入浴剤で白乳色に染まった丸い浴槽に仲良く二人で入ることになった。
向かい合うのは気恥ずかしいからと、篤人に背中を預ける凪だったが。
数日触れていなかったことで凪不足に陥っている篤人は、何の断りもなく突然その肩に顔を埋める。
「はあ……やっと凪の肌に触れられた」
「ちょ、くすぐったいからやめ――」
「んー、少しだけ……」
首筋を篤人の鼻先が滑り、思わずぴくりと肩を震わせた。
石鹸の香りと視界を霞ませる湯気が、凪の平常心をことごとく奪っていく。
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