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サイズ的に指輪ではない気がしつつも、ゆっくり開封していくと。
有名なブランドものの、エレガントなデザインの腕時計が入っていた。
「わ、私には高価すぎる……」
「そんなことない、凪の手首に絶対似合うと思ったんだ」
「しかも、篤人に何も用意してないし」
この関係はもう終わってしまったと思い込んでいたから、クリスマスプレゼントどころではなかった。
申し訳なさそうに眉を下げて話す凪だが、そんなことは気にも留めない篤人は優しい目をして見つめてくる。
「凪と同じ時間を過ごせますように、って俺の願いを入れておいた」
「っ……」
「本命の指輪は、二人で選びにいこう」
「篤人……」
「今すぐじゃなくてもいい。でも俺の気持ちは変わらないから――」
そう言って凪の頬に手を添える篤人は、やはり結婚を仄めかしてくる。
付き合って三ヶ月しか経っていないから、まだそこまでの覚悟も実感も湧かないけれど。
それでも将来そうなれたら嬉しい自分がいることも、凪は自覚していた。
「うん……こんな私だけどこれからもよろしくお願いします」
「ありがとう、凪……ずっとずっと愛してるよ」
心底嬉しそうに笑顔を浮かべる篤人を見ると、自然と腕が伸びていき。
その体を強く抱き締めて胸に耳を当てた途端、心臓がドクドクと大きく速く音を立てているのが聞こえてきた。
余裕そうに見えて実は頑張って緊張を隠していたのかな?と思うと、やはり篤人に対して可愛さが勝ってしまう凪だが。
(今の篤人には内緒にしておこう……)
仕事中の冷静沈着で頼り甲斐のある姿も、恋人だけに見せる初な反応や甘え上手なところも。
全部が凪の心にうまくはまっていき、底なし沼のように抜け出すことができないことを。
簡単に教えてしまうと調子に乗りそうだから、今は口を閉ざしてただただ鼓動を聞く。
だけど篤人が思っている以上に、凪は心も体もすっかり依存していて。
つまりは、ラブロマンスの真っ只中にいた。
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