08. 特別な日だから

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 サイズ的に指輪ではない気がしつつも、ゆっくり開封していくと。  有名なブランドものの、エレガントなデザインの腕時計が入っていた。 「わ、私には高価すぎる……」 「そんなことない、凪の手首に絶対似合うと思ったんだ」 「しかも、篤人に何も用意してないし」  この関係はもう終わってしまったと思い込んでいたから、クリスマスプレゼントどころではなかった。  申し訳なさそうに眉を下げて話す凪だが、そんなことは気にも留めない篤人は優しい目をして見つめてくる。 「凪と同じ時間を過ごせますように、って俺の願いを入れておいた」 「っ……」 「本命の指輪は、二人で選びにいこう」 「篤人……」 「今すぐじゃなくてもいい。でも俺の気持ちは変わらないから――」  そう言って凪の頬に手を添える篤人は、やはり結婚を仄めかしてくる。  付き合って三ヶ月しか経っていないから、まだそこまでの覚悟も実感も湧かないけれど。  それでも将来そうなれたら嬉しい自分がいることも、凪は自覚していた。 「うん……こんな私だけどこれからもよろしくお願いします」 「ありがとう、凪……ずっとずっと愛してるよ」  心底嬉しそうに笑顔を浮かべる篤人を見ると、自然と腕が伸びていき。  その体を強く抱き締めて胸に耳を当てた途端、心臓がドクドクと大きく速く音を立てているのが聞こえてきた。  余裕そうに見えて実は頑張って緊張を隠していたのかな?と思うと、やはり篤人に対して可愛さが勝ってしまう凪だが。 (今の篤人には内緒にしておこう……)  仕事中の冷静沈着で頼り甲斐のある姿も、恋人だけに見せる初な反応や甘え上手なところも。  全部が凪の心にうまくはまっていき、底なし沼のように抜け出すことができないことを。  簡単に教えてしまうと調子に乗りそうだから、今は口を閉ざしてただただ鼓動を聞く。  だけど篤人が思っている以上に、凪は心も体もすっかり依存していて。  つまりは、ラブロマンスの真っ只中にいた。
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