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なんだかいつもと様子が違う佐渡部長に対して不安を覚えた凪は、まさか自分と篤人の交際が知られてしまったのではないかと考えた。
「二人とも、朝礼後に会議室きてくれ」
「え……」
「わかったな、二人一緒にだぞ」
「は、はい」
突然の呼び出しだけでなく、二人一緒に来ることを念押しされるとますます怪しい。
用件を伝え終えて戻っていく佐渡部長の背中を見つめ、凪は徐々に不安に駆られていく。
そして、この危機をどう乗り越えようかと篤人に目配せすると。
彼は呼び出しを気にすることなく、メールチェックの続きを進めていた。
(え、何も考えていない⁉︎)
「八乙女さん、先ほどメールで本日のリスト送ったので」
「え! あ、はい」
「チェックお願いします」
いつも通り業務を振ってくる篤人。
佐渡部長には凪以上にお世話になっているはずなのに、少しの不安も抱いていない様子に疑問を抱く。
別に職場でいちゃつくつもりはさらさらないにしても、自分たちの交際が知られたとなると色々な気まずさは正直、ゼロではない。
もしかすると本社に勤める愛美を通して、佐渡部長に話が漏れた可能性もあるし。
その事実確認に二人揃って呼ばれたのかもしれない。
考え出すと心当たりが溢れ出して止まらない凪は、就業開始前から険しい顔を浮かべていた。
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