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朝礼を終えて、すぐに会議室へと向かった凪と篤人。
何を聞かれるのか、何を語られるのか気が気でない凪とは違って。
仕事モードの篤人は冷静な態度のまま、適当に席に着いて佐渡部長を待った。
そして程なくして現れた佐渡部長の第一声に、凪は目を丸くする。
「……と、取り壊し⁉︎」
会議室に驚きの声が響き渡った。
しかし凪に同じく初耳なはずの隣にいる篤人は、さほど驚いている様子はない。
「お前たちが住んでいる社員寮な、建物全体の老朽化によって来年取り壊すんだ」
「え、待ってください。取り壊しても同じ場所にまた建て替えるんですよね?」
「いや、社宅関連自体を縮小するって上の役人が決定した」
「はあ⁉︎ 困ります!」
突然のアパート取り壊しと、住む家を追い出される話に納得できない凪が抗議の姿勢をみせるも。
決定したことを覆せない佐渡部長が、まあまあと宥めてくる。
「取り壊しは半年後。それまでに二人とも新居見つけて引っ越し頼むぞ」
「そんな、急ですよ……!」
「もちろん引越しにかかる費用は会社が出すから」
「あの広さに破格の家賃、他に良い条件はそうないんです」
「八乙女、これを機に防犯面がしっかりした部屋借りろ」
佐渡部長の心配する言葉には同意の篤人が、バレない程度に頷いている。
同じアパートに住んでいるのだから、篤人も引っ越さなくてはいけなくなるというのに。
その余裕は一体何?と腹立たしさを覚える凪。
「新居が決まったら人事に出す住所変更も忘れずに」
「いやだ」
「や〜お〜と〜め〜?」
「……わかりました」
「話は以上。仕事戻っていいぞ〜」
聞き分けのない部下から何とか了承を得た佐渡部長は、二人を置いて先に会議室を出ていった。
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