エピローグ

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 三ヶ月後に取り壊されるこのボロアパートで、運命を変える出会いをした。  でもそれは、決して運命的で美しいものでも、人様にお話できるようなものではなくて。  どちらかというと、最低最悪な部類に入る。  二十五回目の誕生日に突然、泥酔していた知らない男が自宅を間違えて上がり込んできた。  そして故意ではないが玄関先で押し倒されると、意識朦朧とする中で女の胸を一揉みし。  極め付けは元カノの名前を呟くという罪を、男は犯した。  そのせいで当時付き合っていた彼氏の俊には浮気を疑われた挙句、誤解を解く間も無く一方的に別れを告げられたのが凪だ。  そんな最低最悪な泥酔男が、翌日には頼り甲斐のあるクールな上司となって再び目の前に現れたというのだから。  人生、何が起こるか本当にわからないし。  今では恋人になっている現実が、本当に意味不明。  そしていつか、そう遠くない未来に。  例えば互いの両親へ挨拶に行った際に“二人の出会い”がどんなものか尋ねられたら、説明に困るだろうなと凪は思った。  でも、その最低最悪な出会いと意味不明な発展が。  間違いなく二人のラブロマンス。 「篤人」 「ん?」 「……愛してるよ」  こんなふうに歩幅を合わせて、同じスピードのまま。  いつまでも隣にいて欲しいのは、  最低最悪な出会いをした、最高最良の愛しすぎる男。  fin.
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