3606人が本棚に入れています
本棚に追加
三ヶ月後に取り壊されるこのボロアパートで、運命を変える出会いをした。
でもそれは、決して運命的で美しいものでも、人様にお話できるようなものではなくて。
どちらかというと、最低最悪な部類に入る。
二十五回目の誕生日に突然、泥酔していた知らない男が自宅を間違えて上がり込んできた。
そして故意ではないが玄関先で押し倒されると、意識朦朧とする中で女の胸を一揉みし。
極め付けは元カノの名前を呟くという罪を、男は犯した。
そのせいで当時付き合っていた彼氏の俊には浮気を疑われた挙句、誤解を解く間も無く一方的に別れを告げられたのが凪だ。
そんな最低最悪な泥酔男が、翌日には頼り甲斐のあるクールな上司となって再び目の前に現れたというのだから。
人生、何が起こるか本当にわからないし。
今では恋人になっている現実が、本当に意味不明。
そしていつか、そう遠くない未来に。
例えば互いの両親へ挨拶に行った際に“二人の出会い”がどんなものか尋ねられたら、説明に困るだろうなと凪は思った。
でも、その最低最悪な出会いと意味不明な発展が。
間違いなく二人のラブロマンス。
「篤人」
「ん?」
「……愛してるよ」
こんなふうに歩幅を合わせて、同じスピードのまま。
いつまでも隣にいて欲しいのは、
最低最悪な出会いをした、最高最良の愛しすぎる男。
fin.
最初のコメントを投稿しよう!