01. 遠距離の彼が帰ってくる

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「すげえ! 瀬山と一緒だな!」 「っ……は?」 「こいつも最近別れたんだよ、なあ?」  人の不幸を平気で漏らすのもどうかと思うが、裏表のない佐渡部長に隠し事は無理な話で。  篤人も破局したばかりと知った凪は、関わりたくなかったはずの直属上司に視線を送ってしまった。  すると、バツの悪そうな表情を浮かべて弱々しく声を漏らす。 「やめてくださいよ。僕は一ヶ月前なんでもう吹っ切れてます……」 「そうか? でも昨日の飲み方はお前らしくなかったぞ?」 「そ、そんなことは」 「あれ? 覚えてないのか?」 「っ……」  どうやら本当に記憶にないらしく、佐渡部長もなんだか哀れに思ってそれ以上は語らなかった。  ただ、昨夜の泥酔した篤人の様子を知る凪は、少し考えてしまう。  普段は冷静沈着を装っている篤人が、かつて恋人だった女性の存在を忘れたくて、泥酔するまで酒を飲んでいたとしたら。 『……まなみぃ……』  あの時、篤人がぽつりと寂しげに呟いたのは元カノの名前で、凪の胸はその“まなみ”の代わりに一揉みされた。  篤人本人と昨夜の件を一言も話していないのに、何となく見えてきた真実に近い全貌。  そして凪の中で、湧き上がる感情は――。 (破局によるヤケ酒からのあの迷惑行為、そして覚えてないなんてホントありえない……)  同じ破局した者同士の情けではなく、やはり軽蔑の眼差しを止めることはできなくて。  本社からやってきたエリート上司の篤人とは、分かり合える気がしないと思っていた。
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