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「やっぱ瀬山さん狙い多いなぁ」
「まさか美里も狙ってるの?」
「ん〜確実に社内一の目の保養にはなるんだけど、恋人って感じじゃないんだよなー」
「やめときな、瀬山さん未練たらたらだし元カノに」
「え、そうなの?」
何気ない凪の一言に食いついた美里は、不思議そうに見つめてくる。
昨日の昼休みに一緒の席で蕎麦を食べた時、篤人が元カノに未練があるという決定的な発言はなかった。
なのに、普段はそんなことどうでも良いと考える凪が、断定的に話したのが尚更引っかかる。
そんな美里の洞察力の高さを思い出し、凪はしまったと自分の発言に後悔した。
「き、昨日佐渡部長もそう言ってたじゃん」
「でも瀬山さんは吹っ切れたって……凪、瀬山さんから何か聞いたの?」
「聞いてはいないけど、なんとなくそんな感じしただけ……」
「……ふーん」
納得のしていない美里の視線が痛い。
しかし篤人が抱いている、一ヶ月前に別れた元カノへの未練は多分本物。
でないと泥酔して本性が露わになっている時、凪の胸を一揉みして元カノの名前なんて呟かないはず。
(瀬山さんみたいなイケメンも、恋愛で苦労してんだなー)
“まなみ”が一体どんな女性で、篤人とどのくらい交際していたのかはわからない。
だけど、あの時の篤人が“まなみ”を恋しく想っていたということは。
きっと、別れた今も心のどこかに“まなみ”が存在している。
だからと言って、無断で胸を揉まれたことは許さないと誓っている凪は。
主役の話題はこれくらいにして、本日二杯目のビールを注文した。
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