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三時間コースの歓迎会が終わり、居酒屋を出たほろ酔いの社員たち。
そして二次会参加の希望者を募り「どこ行くー?」と会話をしている中、後輩の男性社員が凪に声をかけた。
「八乙女さんは二次会行きますかー?」
「いや、今日は帰るわ」
「えー珍しいですね、気をつけて帰ってください」
「はーい、お疲れ様〜」
まだまだ元気が有り余る後輩が凪に向かって手を振るので、軽く腕を上げて応える凪。
その横で、同じようなやり取りが聞こえてきた。
「えー? 主役の瀬山さん二次会行かないんですかー?」
「少し疲れたので、今日は帰ります」
「明日土曜日ですし行きましょうよー」
「すみません、次回は参加しますね」
眉を下げて謝る二次会不参加の篤人に、残念そうな女性社員たち。
参加して!というキラキラした眼差しに押されることなく、強い意志を持って帰りはじめる篤人だったが。
前方を歩く凪と同じアパートとは知らず、帰り道が被ってしまった。
「あ、八乙女さんもこっちですか?」
「……はい。というか……」
「もしかして社員寮?」
「う……そうです」
泥酔したあの日のことを、この上司は本当に何も覚えていないんだな。
そんなふうに思いながら、同じアパートに住んでいることを初めて知った篤人の驚いた表情を、呆れた心で受け止める凪。
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