02. 歓迎会の帰り道

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 午後十時を過ぎた、静かな夜道を並んで歩く凪と篤人。  既に嫌い認定している上司との会話なんて、長く続くはずもなく。  凪は気まずい空気を感じていると、突然篤人の方から話題を広げてきた。 「あのアパート、女性も住んでたんですね」 「え?」 「防犯的にも外観的にも、あまり女性は好まないアパートだと思ってたから」  だから、まさか凪があのボロアパートに住んでいるなんて思ってもみなかった篤人が。  何故か嬉しそうに微笑んで言った。 「同じアパートの住人として、よろしくお願いします。八乙女さん」 「っ……こ、こちらこそ。よろしくお願いします」  知らない土地に異動してきてまだ数日しか経っていない。  篤人の抱える不安や疲労は当然だと理解した凪は今、少しだけ歩み寄る気持ちが芽生えてきた。  それは、泥酔した姿にほんの一瞬、今の微笑んだ姿が塗り替えられたから。  きっと根は良い人なのだろう。だから、今のうちにはっきりさせておきたかった。 「……あの、瀬山さん」 「はい」 「一昨日の夜のこと、覚えていますか?」  足を止め真剣な眼差しで見つめてくる凪に、篤人も歩くのをやめて向き合った。  そして質問された一昨日の夜を思い出そうと、夜空を見上げて考える素振りはするものの、ゆっくりと首を傾げて――。
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