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ガチャガチャ……。
「⁉︎」
その時、玄関のドアノブを動かす音が聞こえたので慌てて洗面所を出た凪は、そのまま鍵を解除してドアノブを捻った。
「俊……!」
勢いよくドアを開け放って、俊の出迎えることしか考えていなかった凪だが。
目の前にいたのは俊ではなく、同年代くらいのスラリと背の高い見知らぬ男性。
ミディアムセンターパートの黒髪に、鼻筋の通った男らしい顔立ちは、一目でイケメンだとわかる。
その上、白のTシャツにネイビーのアンクルパンツという服装から漂う、清潔感と爽やかさ。
しかし足元はおぼつかなく酒の匂いを纏い、頬をほんのり赤く染め空虚な瞳を浮かべていた。
「え、どちらさま……」
「……あ、間違、えた?」
「はい?」
「すみません……越してきた、ばかりで……」
首根をかきながら本当に困った様子の男性ではあったが、すぐに酔っ払いの迷惑行為だと感じた凪。
それにしても、覗き穴で来客を確認する前にドアを開けてしまうなんて……。
無用心な行動を反省しつつ、トラブルに巻き込まれないうちにドアを閉めようとした。
が、男性の足がドアに勢いよく当たってしまい、その衝動でバランスを崩しふらついた男性が凪の方へと覆い被さってくる。
「え! ちょ……わ!」
ガタガタン!
狭い玄関のせいで避けることもできない上、男性の体を支えるほどの力もない凪は。
そのまま押し倒されるような形で、お尻、背中の順番で廊下に倒れ込んだ。
そして玄関のドアが、虚しくバタンと閉まってしまう。
「あの! 重! 早く避けてっ」
「ん〜……ここどこ」
「もう!」
話の通じない男性に混乱と怒りが込み上げる。
しかし、男性の両肩を押し返そうとしてもびくともしない。
だいぶ泥酔している男性はこの状況を理解していないのか、密着する互いの体を気にも留めない様子。
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