07. 約束

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 一つ、また一つとゴミ袋に空き缶を放り投げていく行為が、まるで篤人との思い出を片付けているような感覚になって。  ふと、手を止めてしまった。 (捨てる? 篤人との……)  最悪だった出会いも、誤解が解けた夜も。  初めて触れた肌の温もりも、全部捨てたいと思っているの?と自問自答した途端。  目頭が熱くなってくるのがわかった。 (捨てたいわけじゃない。全部、私の中では大切な思い出だから……)  篤人が愛美を選んだとしても、愛美と未来を歩むことを決めたとしても。  凪の思い出も感情も心も、凪のものだから。 (勝手だけど、大切に持っておくくらいはいいよね)  やっぱりすぐに吹っ切れるなんて難しくて、でも叶わないこともわかっているから。  せめて、次の恋が訪れてきてくれるまでは。  密かに想うことを、どうか許してほしいと願った凪。  こぼれた涙が頬を伝って、落ちそうになる寸前で手の甲に拭われた。  そうして一人鼻を啜った凪は、何事も起きていなかったように空き缶を片付けていく。  だけど、自分のベッドで寝ていた美里は静かに目を覚ましていて。  涙までは見えていなくても、凪が悲しんでいることを音で感じ取っていたから――。  篤人の存在が凪の中で、今までの中でも特別なものだったんだと。  昨日今日で強く理解できたイブの日となった。
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