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すると突然、大事なことを思い出した篤人がハッとして凪の肩を掴み声を上げる。
「スマホ!」
「え⁉︎」
「凪に連絡しても全然繋がらなくて、死ぬほど心配していたんだ」
昨日、居酒屋で篤人から電話があった途端に切れたスマホの充電。
美里の家で充電することもできたのに、それすらも忘れていた。
しかし、今回の二人のすれ違いは凪だけが原因ではなくて――。
「愛美を連れ出してすぐ、佐渡部長に有給休暇の連絡をしたんだけど、その時俺のスマホが充電切れちゃって」
「え、篤人も……?」
「昨日帰宅して、やっと凪に事情を説明できると思ったら電話が途中で切れて以降繋がらないし家にもいないし」
「仕方ないでしょ、私も充電切れちゃったのよ」
「今まで一体どこで何してたんだよ」
「それは、美里と朝まで飲んで……」
「……それ、証明できる?」
「は? どういう意味?」
不安を装った疑念の目を向けてくる篤人に、凪は眉根を寄せて不機嫌を表した。
連絡の取れない凪が、他の男のところに行っていたのではないかというニュアンスを耳にして。
一体誰のせいで朝まで飲んでいたと思っているんだ!と、喉から吐き出そうになった時。
凪は両頬を包み込まれて、篤人から久々の口付けが降ってきた。
「っごめん、大人気ない嫉妬だ……今の一言は忘れて」
「……嫉妬、て……」
「はあ……カッコ悪いな、俺」
そう言って、首根をかきながらバツが悪いような表情を浮かべる篤人。
しかし凪は、キスなんかで誤魔化されないという気持ちで、篤人から放たれる嫉妬の理由を求めてじっと待つ。
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