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「正直怖かった。凪は素敵な女性だから、すぐに男が寄ってくるだろうし……」
「そ、そんなこと……」
「誤解を招いた俺なんてすぐ捨てられてもおかしくなかったんだ」
「……そう思うなら、置いてかないでよ……」
他の男が寄ってこられないように、一生私のそばを離れなければいい。
そんな寂しい思いを滲ませて吐いたセリフは、篤人の独占欲を加速させて再び凪の体を強く抱きしめる。
「もう二度と凪のそばを離れない。約束する……」
「何それ、プロポーズでもあるまいし」
「あれ? そのつもりだったんだけど」
「……は?」
私たち、まだ交際三ヶ月なんですけど?
そう言いたげな凪の顔を確認したところで、篤人が含み笑いをして突然その手を繋ぐと。
二人が住む自宅アパートとは逆方向に歩きはじめた。
「じゃあ行こっか」
「え、篤人? 行くってどこに?」
少しの間音信不通となった凪を見つけて、抱きしめてキスをした篤人はついに心に余裕を取り戻し。
戸惑う凪の手を引いたまま、幹線道路までやってきて片手を挙げた。
するとタイミングよくタクシーがやってきて、二人の目の前に停車する。
後部座席のドアが開かれ、乗車するしかない空気。
そこでようやく、篤人が凪に微笑みながら話してくれた。
「約束しただろ?」
「え……」
「イブは一緒に過ごすって」
そう、本日はクリスマスイブ。
二人で初めて迎える、約束の日はまだ終わってはいない。
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