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#1 寝起きの質問
◇ side牧 ◇
「なぁ、やっぱり『なんでやねん』とか言うの?」
「いや、牧くんって京都出身らしいから『なんでなんどすえ』とかだろ」
二人の男が明らかに小馬鹿にした様子で俺を見ながらギャハギャハと品なく笑っている。
うちの大学は世間的にもそこそこ名の通った学校のはずやけど中にはこんなんもおるんやな、と目の前の不快な物体に視線を向けながら俺はわざとらしいほどのニコニコ顔で返す。
「『なんでやねん』は言うけど『どすえ』は一般人はほとんど使わへんよ」
あー、はよどっか行ってくれ。
以前この二人組に授業ノートのコピーを頼まれてそれを適当に断ったら、以来俺にちょいちょい突っかかってくるようになってしまったのだ。
そもそも名前すらろくに知らんやつに何でそんなめんどくさいことせなあかんねん。
親に頭下げて二年間浪人させてもらった結果にようやっと掴んだ大学生活。
こんなしょーもないやつらと関わりたないけど、揉めて俺のキャンパスライフにケチつくんもいらんな。
まぁ適当にヘラヘラ相手してたらそのうち飽きてどっか行くやろ。
「じゃあなんか京都弁しゃべってみてよ」
「あ、俺も聞きたーい」
「はは、そんないきなり言われても何も出てこーへんよ」
(今時テレビやネットで標準語以外もよーさん飛び交ってる時代でいち方言の何が珍しいんや)
鬱陶しい絡みを止めない名も知らぬ同窓生たちに色々言いたい気持ちをグッと堪えて俺は張り付いた笑顔で笑って返す。
「えぇー、いいじゃん。な、ちょっとだけでいいからさぁ」
「…つまんねーやつ。関西人のくせに全然面白くないじゃん」
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