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「裕樹さん………俺のこと、好き?」
「なっ!……はぁっ!?」
間の抜けた声を上げながら思わず立ち上がってしまった俺を、仁は意地悪な笑みを浮かべながらニコニコとまっすぐ見ている。
「教えてくださいよ、裕樹さん」
「…教えるって、そういう…いや、そりゃ……仁のことは………じゃなきゃ今、こうしてない、ていうか……あ、朝だぞ、まだ!………いや、朝とか関係ない、よな…あー、その……」
寝顔をじっくり見ていた仕返しなのか、もごもごと狼狽える俺を明らかに楽しんでいる仁。
俺は俺で予想外の問いに全く対応できず、情けないことにただあたふたとするばかりだった。
仁はそんな俺を一通り楽しんだのかククッと小さく笑うと立ち上がり、俺の方をポンと叩いて耳元で囁いた。
「…顔、真っ赤ですよ?答え、その様子で分かりましたから」
「っ!」
「俺、顔洗ってきますね」
仁はそう言うと俺を部屋に残して、一人さっさと洗面所へ行ってしまった。
顔をほのかに紅潮させた俺は開けっぱなしの扉をただぽかんとした表情で見つめている。
そして、仁を可愛いと思ってしまったさっきまでの自分をひどく後悔した。
「……日に日にデビル度が上がってるな、あいつ……」
一緒に暮らすようになって来週でちょうど二ヶ月。
まだまだ大人の威厳は見せつけられそうにない。
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