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#2 二度目の失言
◇ side黒野 ◇
仁を見送ったあと、俺はリビングのソファに浅く腰をかけながらスマホ片手にいつものルーティンであるネットニュースサーフィンに勤しむ。
仁に合わせてすっかり朝型人間にシフトしつつある俺だが、出勤時間までかなり余裕を持てるようになりこうしてダラダラと準備をしている時間が心地よい。
それに、やはり誰かと一緒に毎朝朝食を食べられるというのはいいものだ。
あんなクールな顔してトーストに塗る苺ジャムに目がないとか可愛すぎだろ、仁。
そんな小さな朝の幸せに浸りながらスマホをスッスッと触っていると、画面上部にピコンと通知が表示された。
『新着メッセージがあります』
一体こんな朝早くに誰だろう。
仁のやつ、忘れ物でもしたのか…?
俺は何という気もなくメッセージアプリをタップする。
表示されたメッセージの差出人に自然と声が出た。
「おっ、懐かしい!マッキーじゃん!」
メッセージの差出人は、懐かしい旧友・牧直貴だった。
マッキーこと牧直貴は大学時代の同級生で俺たちが一年生の時に仲良くなり、そのまま卒業するまでなんだかんだ一緒につるんでいた悪友だ。
あちこち旅行も行ったし、クラブとかバーに初めて俺を連れて行ってくれたのも牧だった。
大人っぽくて物知りな牧は年齢が俺より二個上だったがそれで変に年上ぶるわけでもなく、誰に対しても気さくで物腰も柔らかくとにかく行動が全てスマートなのだ。
そんな牧に俺は密かに、いや大々的に憧れていた。
京都出身の牧は大学のある神奈川でも方言が抜けなかったようで、よく京都弁の柔らかな口調でみんなと談笑している風景が印象に残る。
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