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そんな様子に憧れていた俺は、一度見よう見まねで京都弁をすこーし使ってみたことがあったのだが、
「ははは、ユウちゃんはそんな無理に俺に合わせんでええよ。それに、そんなんしてたらユウちゃんの良さがなくなるで?」
牧にあっさりそう言われたことで単純な俺は似非京都弁を話すのをすぐ止めた。
大学卒業後、俺は当時のバイト先であった「藤乃坂ゼミナール」の正社員として東京校で塾講師としての勤務が決まり、牧は神奈川の大手医療メーカーでの就職が決まった。
卒業して初めの二年こそお互いの近況をちょくちょく報告しあっていたのだが、三年目の正月にメールを送ったくらいから牧からの連絡は一切途絶えてしまっていたのだ。
他の同級生にそれとなく牧の近況を聞いてみると、どうやら勤務先がかなりハードな会社だったらしい。
その後も何度か連絡を試みたものの返事が返ってくることはなく、牧のことが心配だった俺も自身の日々に追われだんだんと牧のことを考える余裕がなくなっていた。
そこへ今回、久々に牧からのメッセージ。
俺は少し緊張しながら、少し震える指でメッセージを開いた。
『久しぶり、覚えてるかな?俺のこと。連絡返せなくてごめん。しばらくの間東京にいてるので久々に会いませんか?』
少しぎこちない文面だったが、それでも牧が俺のことを覚えていてくれていたことが何よりも嬉しかった。
俺はすぐに返信を送り、そこからとんとん拍子に再会の日取りが決まっていった。
マッキーに会ったら何話そう。
大学の思い出話、マッキーの今のこと、そして俺の今のこと……
俺は久々の再会に胸を躍らせながら、その日を指折り数えて待った。
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