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待ち合わせに指定した駅前の噴水近くにはカップルや仕事帰りのサラリーマンが互いに楽しそうに話をしている。
俺は噴水横のベンチに腰掛けて周りをキョロキョロ見回していると、背中の方から懐かしのあの京都弁が聞こえてきた。
「えらい久しぶりやな、ユウちゃん」
振り返るとそこには見知ったあの柔和な笑顔。
センターで分けた前髪は変わらないが、あの時よりも少しウェーブがかった髪型になっていた。
「マッキー!ほんと久しぶり!!」
「はは、元気してたか。…て聞かんでも分かりそうやな」
「マッキーこそ元気だった?俺、いっぱい聞きたいことあるんだよね。ちっとも連絡くれないからさ」
俺は大学生の頃に戻ったように牧の肩を二、三度バシバシと叩いた。
少し疲れたような笑顔で牧が笑ったが、それでも雰囲気はあの頃のままだ。
あの頃の俺が憧れていた牧直貴そのままだった。
「まぁ色々バタバタしてて…悪かったな。さっそくどっか店入ろか。そこでゆっくり積もる話でも
しようや」
「おう、今日はとことん付き合ってもらうからな!」
数年ぶりに顔を合わせたというのに、そんなブランクは一切感じさせないくらいあの時の俺たちへと時は一瞬で戻った。
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「へぇー、ユウちゃんは今も立派に『先生』やってるんかー」
「んーいやまあ、立派かどうかは分かんないけど。バイトでやってたのが楽しくてそのまま今も継続中って感じ」
「いや、そんだけ続けられるのはすごいって」
ビールのグラスをクッと飲み干しながら牧が言った。
今でも牧に褒められると何だか少し嬉しいような恥ずかしいような感じがして、俺はヘヘッと子どものように照れ笑いをした。
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