狂依存

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「あの二人、あれでよかったのか?」保健室で木村は鈴木に問う。 「あれって?」 「二人、お互いに依存している。あのままではいずれ……」  不安そうな木村を鈴木は笑う。 「運命は変えられないの。あの二人が出会い、依存し合うのはきっと運命よ。あなたも自分で身をもって体感したでしょ」  鈴木はそう言いながら木村の首元の服をめくる。そこには真新しい鬱血痕と真っ赤な首輪。首輪は内側の棘が少し首に食い込んでいる。彼女達も互いに依存しているのだ。  鈴木は言葉を続ける。 「彼女たちは自分たちの異常性に気づいていない。 そもそもDomやSubなんて両方合わせても数パーセントしかいない。とても稀な存在なのよ」 「それに、学校という小さな社会は時代の変化に敏感だから女子達で付き合うなんて普通のことになっている。けれども世界では女性同士のパートナーですら少数派だ。社会人になってびっくりしたのを覚えているよ。それでもあなたがいるから生きてきたし、これからも生きていくことができる」  鈴木と木村は奈々を養子にとってから、とある古びたアパートでplayを行っていた。誰にも見つからぬよう隠れて行われていた。  鞭や手錠、カッターに玩具。考えられる全ての方法で痛めつけ、甘やかす二人のplayは杏と佳子のものよりも痛々しく、あでやかであった。 「私もあなたがいなければ死んでいた。けれど……」 「ねぇあなたは彼女達に生きていてほしい?」 「もちろん生きていてほしい」  まだ納得しない木村に鈴木が語りかける。 「生きるには犠牲が必要なの。私たちや彼女たちに必要な犠牲がたまたまplayだっただけよ。それでも納得いかないなら今夜わからせてあげるわよ」 「……見えるところに跡を残さないなら」 「わかってるって!」  保健室では例の部屋へと廊下を杏と佳子を見守る二人の先輩が笑っていた。
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