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「今日でいいんだよね」
佳子はまた「Play room B」の扉の前にいる。
久しぶりに放課後、杏と話せるので緊張している。戸を開こうとすると先に中から開かれた。
「佳子、いらっしゃい」
室内の様子は全く変わっていない。薄暗いままだ。ゆっくりと戸を閉じる。
「杏。よろしくね」
「こちらこそよろしく、佳子。こっちに"来て"」
ほどよい力で引きつけられる。前とは全然違って優しい。
「目を閉じて」
言われるがままに閉じうと首元に手の当たる感覚。少しして軽い圧迫感がある。
「もういいよ」
そう言われ、目を開くとにっこり笑顔の杏がいる。
「前に言ったcolor。やっぱり白い肌に黒は綺麗だね」
ポケットから鏡を取り出し確認すると黒いチョーカーだった。中央に銀色の金具と黒のハートが付いている。
「可愛い」
「でしょ?」
チョーカーも自慢気な杏の様子も全てが愛おしい。だからこの後のことも怖くなかった。
「じゃあ"Play"を始めます。佳子、"座ってください"」
力に補助されて地面にすわる。
「"いい子"ですね。"可愛い"ですよ」
と頭を撫でられる。嬉しくて、気分が綿飴のようにふわふわとする。
「じゃあちょっと脱がしますよ」
杏はそういうと私のブレザーとシャツを取り去ってしまう。残っているのは黒い下着のみ。
「綺麗な肌をしていますね」
そう言いながら杏は私の肌を撫でる。少しくすぐったい。
「佳子、"寝そべってください"」
命令通り地面に仰向けに寝転がる。床はひんやり冷たい。
「"いい子ですね"」
その一言だけ。一言なのに甘い声が私をふわふわとさせる。杏はポケットから何かを取り出した。カチカチと音がしている。もしやこれは……
「佳子は綺麗な白い肌をしていますよね。きっと血の赤も映えまよ」
そう言いながらカッターの刃を右手首に当てられる。そのまま肘に向かってゆっくりとうごかされる。
「ああ、"綺麗"ですよ。佳子がもっと"綺麗"になってますよ」
綺麗と褒められるおかげで前のような恐怖は生まれない。ただただ愛おしさが増すばかり。カッターの刃は右肘から右肩へ。そこで一度離れて左肩へ。そこから肘を通って左手首。切り返して左肩。というふうに赤い足跡をつけながら動いてゆく。
多少の痛みはあるが杏にずっと褒められ、撫でられしていると全て好きに変換されてしまう。腕全体が真っ赤になるとカッターは終わってしまう。だが代わりに首に手がくる。
「息、全部吐いてください」
言われるがままに息を全て吐く。すると首を絞められた。以外と苦しくはない。喉がヒリヒリと痛む。頭がパンパンになる。くらくらする。十数秒して手を離される。
「はぁ はぁ 」
ちょっと苦しいけれど、ハマりそうだな。などと考えながら息を整える。
「痕ついてますね」
嬉しそうに告げる杏。
「私は杏のものって証だね」
そう言い私も笑う。私、木下佳子は彼女、川上杏のものである。その事実に胸を躍らせながら後始末をして部屋を去った。
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