狂依存

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 とりあえず私は学校の裏庭にある幹の太い木へ向かう。ここにロープを結んで死ぬのを想像すると少し気持ちが落ち着くのだ。  いつもの定位置へ向かうと今日は先客が。よく見るとほんとに首を吊っている。これはマズイ。  急いで縄を解き、地面に下ろす。そこで私は気づく。先ほど廊下で見た美女だと。薄い灰色のセーラー服に身を包む彼女はなかなか目を覚まさない。私が焦って肩を叩きながら耳元で大声をかけると、ようやく彼女は目を覚ました。 「あの、大丈夫ですか?」  周りを見渡し、とても深くため息をつく。 「あんたが縄を解いたの?」  目は髪と同じで真っ黒。闇深い色をしている。その目からは怒りが。 「は、はい!そ、そう……です」 「どうして邪魔するんだ!どう見ても自殺なのにどうして邪魔するんだ?」 「なぜって……死にかけている人がいれば助けるのが常識といわれるものだから」  助けてほしくない気持ちもわからなくない。だがここで死なれれば後で面倒なことになるのはわかりきっている。自殺は人に迷惑をかけないところで行なってほしい。 「とりあえず保健室に行きましょう」  彼女の手をとるも振り払われた。 「行かない。"邪魔しないで"」 『邪魔しないで』その言葉を聞いた瞬間、身体が動かなくなった。足から力が抜け、地面にへたり込む。 「あんた、もしかしてSubか」 「え、あ、はい」  突然ダイナミクスを言い当てられ混乱していると頭を撫でられる。 「"偉いよ"」 身体の制御権が返却される。 「ほら、立って」 現状を理解しないまま差し出された手をとり保健室へ連れて行かれた。 「面倒なことになった」  自身をDomでないかと疑ったのは二年前。クラスメイトに鈴木お気に入りの鉛筆を取られた時、私は無意識にCommandを打ってしまったらしくその子が動けなくなってしまった。  すぐに先生が来てくれたがそれ以降そのクラスメイトは学校に来なくなってしまった。謝る機会さえなかった。それ以降他人と話すのが怖くなった。  休み時間、友人たちは私を避けたし、私も友人を避けた。これ以上被害者を作らないために。  あの頃は自分がDomでないという希望があった。だが今はその希望も打ち砕かれ死しか救いが見出せない。この力が己の欲のまま動いたために、大切な人を傷つけるところをもう見たくない。自殺も邪魔された。見つからない自殺場所はどこだろう。そう考えるも思いつく前に保健室についてしまった。
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