狂依存

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「失礼します。一年四組の川上杏です」 「どうぞー」 扉を開くと中には一人。木村という先生だった。 「どうしたの?」 「私が無意識にCommandを使ってしまって。この子が未経験ぽかったので念のため。私は用事があるのでさよなら」 「あ!ちょっと」 呼び止められたが気にせずに部屋を出る。用事なんて特にないのだがあの場にいるのはなんとなく嫌だった。  私は一度教室に戻り、誰もいないことを確認してから呟く。 「なんなんだあの可愛い生命体は」 クリクリの目、ふわふわと柔らかい茶髪、小柄な体格。虐めたくなるほど愛おしい。  あぁ、駄目だ。やはり私は傷つけることでしか人を愛せない。  静かに嘆きつつ袖をまくる。今朝つけたばかりの赤い筋。昔、自殺未遂を起こした時に『自分を愛しなさい』と言われたときに、偶然ネットで見かけたところ意外と良くて、今まで続いている。  傷跡が痛むたび、自分を大事にできる気がするのだ。他の人には痛みに変わる何かがあるらしいがそれがわからない私はポケットからカッターを取り出し、手首に自愛をのせる。  あの子がこの光景を見たらどう思うだろう。きっと怯えて怖がるだろうな。舐めさしたらいいかもしれない。かなり痛いだろうが、痛みと本能の間でもがく彼女はさぞ美しいだろう。  想像すると、刃が深く入り傷は大きくなり赤い血が白い腕を飾った。  後片付けを終えてから思う。私はあの子に関わらないほうがいいと。それはあの子のためにも、私のためにも。  私があの子に関われば、必ずあの子を傷つける。それは、駄目だ。綺麗なあの子を傷つけるわけにはいかないのだ。  もし私がDomでなければ、せめてこの力を完全に制御できたなら、違っていたかもしれないけれど。
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