狂依存

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「おーい、大丈夫かい?」  まだ曖昧な意識を無理矢理引き戻す。 「あ、木村先生。ここは……保健室?」 直前の記憶はモザイクがかかったように思い出せない。 「大丈夫?木下さん。あなた、事故で強いDomの力にあたってフラフラしたらしいけど」  あ、そうだ。確か黒髪の人が自殺しかけてて、それを止めた後、ふわふわしたんだ。 「何があったか教えてくれる?」  自殺のことは言わない方がいいだろう。面倒事は避けて、今はとにかく休みたい。 「ごめんなさい。あんまり覚えてなくて」 「そう。また思い出したら教えてね。あと落ち着いたら帰って大丈夫だから」  先生は忙しそうにファイルの山へと向かって行った。これ以上迷惑をかけるわけには行かないのですぐに部屋を出て帰る。  次の日の朝は不思議と早く目が覚めてしまった。頑張って目をつむっても、覚醒した頭はさえるばかりだった。そのためもあり不機嫌に、なってしまう。 「おはよー」 「おはよう佳子」  奈々はいつもの笑顔で話しかけてくる。ああ、大人しい彼女は今日も変わらない。きっとNormalなのだろう。羨ましい。彼女は今まで通りに生きていくのだろう。乱暴に鞄を置き中身を取り出す。 「あ!あぁ……もう」  教科書が飛び出したのを拾う。廊下側の席で、扉も開いていたせいで、廊下までノートが滑っていった。めんどくさい。心の中で舌打ちしながら廊下まで歩く。  すると優しい誰かが拾ってくれた。視線を上げると見覚えのある顔が。 「あ、昨日の人!おはようございます」 「あんた、昨日邪魔してきたやつか。このノートもあんたのか?」  彼女の手にはピンク色のノート。一番可愛い、お気に入りのものだ。 「は、はい!そうです。拾ってくれてありがとうございます」 「ふーん。一年三組木下佳子、見た目どおり可愛い字だな」  そう言いながら渡されたノートは短時間しか持っていなかったはずなのに暖かい。平熱が高いのだろうか。だが顔をのぞくと心なしか赤い。熱があるのかもしれない。 「ほら、はやく教室戻らないと遅れるぞ」  ぼーっとしていた私にノートを押し付け帰ってしまう。熱がありそうだったが大丈夫だろうか。不安だがひとまず教室に戻る。  奈々が片付けてくれたのだろう。机の上に綺麗に筆記用具が並んでいる。 「ありがとう、奈々」 「いいよ。親友だもの」  どうしてだろう、先程のは打って変わって今は彼女の笑顔がいつもどおり可愛らしく見える。ころころと感情が変わって今日はおかしい。疲れているのだろうか。チャイムの音をぼんやりと聞きながら考える。
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