狂依存

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 次の日、私は朝一番に奈々に文句を言いに向かった。 「ねえ、なんで補習あるのに誘ったの!しかも杏さんまで誘って」 「ごめんね。放課後急にだったから。でもあの後どうしたの?」  昨日のことを思い出せば嬉しさと恥ずかしさと気まずさで心がぐちゃぐちゃになる。奈々に相談するか全身で考えたが、自分で考えていてはバク転しようがわからないので昨日の一部始終を話した。 「それは……脈アリだね」 「みゃくあり?」 「そう、脈アリ。つまり、杏さんが佳子のことが好きな確立が高いってこと。というか今回は100%そうだよ」  佳子に断言されると、本当かもしれないと思えてきた。  杏さんに subとして躾てもらえたらどんなにいいだろうか。美しく儚い桜のような彼女は私をどんな風に躾てくれるだろうか。想像するだけで胸が高鳴り、躍り出してしまう。 「奈々、こういう時はどうしたらいいの?」  庭にある枝垂桜を眺めながら聞く。目の奥がきらりと光った気がした。 「初恋、片思い、脈アリ、ときたら次は告白だよ!」  そうか。告白か。杏さんに思いをぶつければ良いのか。ならばはやくしないと。心が舞い上がっている今ならきっと伝えられるから。 「わかった!言ってくる!」  奈々はまだ何か言おうとしていたが気にせず教室を飛び出す。途中で誰かとぶつかってしまった。 「ごめんなさい!」  軽く謝ってからまた走り出す。急がなければ。伝えなければ。その一心で人通りの多い廊下を駆けた。 「木下さんって思った以上に忙しない人ですね」  そう話すのは先ほど佳子にぶつかられた、奈々のパートナーになる予定の相手、柚子だ。  白いシャツに薄い黄色のスカートとネクタイの彼女はとてもかっこいい。 「こればっかりは佳子でも許せないな」  イラつきを見せる奈々を柚は包み込むように抱きしめる。そして、耳元へ語りかける。 「そんなに怒らなくてもいいじゃないですか。それよりも私のことを見てくださいよ」  そうすると怒りも消えていなくなり落ち着いた奈々がぎゅっと抱きしめ返す。 「そうだね、愛おしい柚子さん。私の大切な柚子さん」 「杏さん!」  四組の教室の扉の前に立ち叫ぶ。教室中に視線を巡らせると隅の方で本を読んでいる彼女がいた。 「杏さん、ちょっと来てください!」 「え、ちょ、何?」  困惑している彼女の手を掴み教室の外へと連れ出す。階段をおり、中庭の枝垂桜の下まで移動する。  先ほど見た時と同じで人はいなかった。 「急に連れ出して、何の用?」 「あの、私、杏さんのことが好きです。パートナーになってください」  しっかりと目を合わせて言う。  言ってしまってから焦る。断られたら、嫌われたらどうしよう。  杏さんは少し真顔のまま私を見て、空を見て、地を見て、それから話し始めた。 「ありがとう、奈々。私も昨日言ったとおりあんたのことが好き。だからこの告白は受けられない。ごめん」 「好きだから受けられない?杏さん、それってどういうこと?」 「そのままの意味だよ。あんたが可愛くて大切だから付き合えないってこと」  理解はできないが、苦しそうな杏さんの顔を見て思う。押せば行けるかも、と。教室へ戻ろうと歩き出してしまった杏さんの背中に叫ぶ。 「杏さん!私を納得させるかあなたがOKするまでずっと私は告白し続けるからね!」  杏さんは振り向かずヒラヒラと手を振るだけだった。
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