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「亜美ちゃーん!」
「由梨ちゃーん!」
到着ゲートで首を長くして待っていた亜美ちゃんの目の前に、由梨ちゃんが姿を現しました。土曜日の空港は、冬休みを迎えたこともあって、いつも以上に人であふれていましたが、二人はすぐお互いに気づくことができました。
駆け寄って手を取り合い、ぴょんぴょんと跳ねている二人を、佳織さんは幸せな気持ちで眺めていました。
二人の首には、お揃いの淡いピンクのマフラーが巻かれていました。
そして、亜美ちゃんの足には、約束どおりクッツンとシータンが――。
「ええっ!?」
あまりに驚いたので、佳織さんは、人目も気にせず大きな声で叫んでしまいました。
亜美ちゃんだけではありません。由梨ちゃんも、赤と緑の靴下をはいていました。
ただし、由梨ちゃんは右足が緑、左足が赤でした。
緑のクッツンとシータン、赤のシータンとクッツンが向かい合い、再会を喜んでいました。
「こういうことだったのね!」
「みたいね……」
佳織さんのとなりで、由梨ちゃんのお母さんの菜々美さんが笑っていました。
「由梨ったら、あの靴下を眺めては、『亜美ちゃん、どうしているかなあ?』と言ってたの。左右が違う靴下なんて、おかしいなと思ってたんだけど……。あの子たち、靴下を通してずっとつながっていたのね」
遠く離れていても、今はテレビ電話などで連絡をとることができます。
でも、時差の問題もあるので、子どもたちが顔を合わせたことは二度しかありませんでした。その寂しさを、あのかわいらしい靴下たちが埋めてくれていたのでしょう。
「ねぇ、ママ! 由梨ちゃんのところにも、サンタさんがマフラーを届けに来たんだって! クッツンのお願いもきいてくれたし、今年のサンタさん、すっごくいいサンタさんだね!」
笑顔で佳織さんに報告する亜美ちゃんの後ろで、由梨ちゃんと菜々美さんが笑っていました。どうやら二人は、亜美ちゃんに話を合わせてくれているようです。
「サンタさんは、いつだっていい人よ! ときどき、失敗することもあるけどね」
「フフフッ! まるでママみたいだね!」
「えっ?」
佳織さんが声をかけようとすると、亜美ちゃんは由梨ちゃんとさっと手をつなぎ行ってしまいました。崇彦さんや優仁くん、そして由梨ちゃんのお父さんが、スーツケースを押しながら亜美ちゃんたちを呼んでいました。佳織さんと菜々美さんも、急いで後を追いました。
今夜は、久しぶりにみんなで一緒に食事をして、フラワーパークのイルミネーションを見に行く予定です。
亜美ちゃんにとって、昨日の晩よりも、さらにわくわくする一夜が始まろうとしていました。
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