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 その夜のこと――。  寝る前に、佳織さんが亜美ちゃんの部屋をのぞくと、恐がりの亜美ちゃんは、今夜もベッドサイドのライトをつけたまま眠っていました。めくれていた毛布を整えてから、出窓に目をやると、毎年使っているサンタクロースからのプレゼント用の靴下とクッツンが並べて置かれていました。  もう十二月に入ったのですから、クリスマスの用意をしても早すぎるということはありません。玄関やリビングに、ツリーやリースを飾ってもおかしくはない時期です。  佳織さんは、亜美ちゃんが何を欲しがっているのか知りたくて、靴下の中に入っている、サンタクロースへのお手紙を見てみることにしました。  プレゼント用の靴下には、「ふわふわでもこもこのマフラーがほしいです」と書かれた手紙が入っていました。  そして、クッツンの中には、「シータンを探してください」という言葉とシータンの絵が描かれた小さなカードが入れられていました。  矢印で「シータン」と説明された靴下の絵を見て、佳織さんはがく然としました――。  *  そして、今日は、十二月二十四日金曜日――。クリスマスイブです。  二学期の終業式がありました。明日からは、冬休みです。  亜美ちゃんは、先生から受け取った「学校生活のきろく」をランドセルに丁寧にしまいました。みんなから褒められそうなことが、たくさん書いてありました。  その日の夕食は、フライドチキンはもちろん、エビフライやかにサラダ、そして、コーンチャウダーまでもがテーブルに並んでいました。亜美ちゃんが大好きな物ばかりです。  でも、一番の主役は、やはりクリスマスケーキです。  今年のクリスマスケーキも、イチゴをふんだんに盛り付けたチョコレートケーキでした。  佳織さんは、仕事を昼で切り上げて、急いで家に帰ってきました。そして、一生懸命今夜の食事の準備をしました。  ケーキだけは、さすがに近所の洋菓子店に注文しましたが、ほかの料理は、どれも佳織さんの手作りです。亜美ちゃんの笑顔が見たい一心で、佳織さんは頑張りました。  亜美ちゃんの「すっごくおいしいよ、ママ!」という言葉が、佳織さんにとって最高のクリスマスプレゼントになりました。
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