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 あの晩、クッツンの中にあった、サンタクロースへのカードのシータンの絵を見て、佳織さんは心の底から驚きました。なんとシータンは、に塗られていました! (そうだわ! クッツンのペアだから、シータンも赤い靴下だと思い込んで探していたけれど、シータンは緑色だったのよ!)  佳織さんは、靴下を両手にはめて学習机に頬杖をつく亜美ちゃんを、じっくり見たことはありませんでした。背後から、こっそり見つめただけでした。  机の引き出しを覗いたときも、クッツンが上になっていたから、わざわざ取り出してシータンを見たりはしませんでした。  それでも、何度かシータンを目にしたことはあったはずです。だけど、クッツンばかりを眺めているうちに、頭の中で勝手にシータンも同じ赤色だと決めつけていたのでした。  明るい赤色の靴下を探していたのですから、水に濡れて黒っぽくなった緑色の靴下が転がっていても、見落としてしまったのかもしれません。  佳織さんは、懐中電灯を持ってきて、洗濯機の横にある洗濯籠と洗い桶を載せたワゴンの周りや洗濯機の後ろの隙間などを、徹底的に調べ直すことにしました。  そして、とうとうワゴンのタイヤと壁の隙間に、細長くねじられた黒っぽい塊をみつけました。  懐中電灯の光の中で、金色の糸がきらりと輝きました。 「シータン! あなた、こんなところにいたの!?」  佳織さんはそう叫ぶと、ワゴンの中に首を突っ込み、思い切り腕を伸ばしてほこりまみれのシータンを摘まみ出しました。思わず頬ずりしそうになりましたが、今は遠慮しておきました。  急いで洗い桶を出し、浴室でお湯を溜めると、おしゃれ着用洗剤をとかして、優しくシータンを洗いました。亜美ちゃんお気に入りのお日さまの香りの柔軟剤で仕上げ、物干しポールにネットを下げて乾かしました。  佳織さんは、お日さまの香りに包まれ元の姿に戻ったシータンを、どうやって亜美ちゃんに渡そうか――と考えました。  「見つかったわよ」と言って手渡せば、亜美ちゃんは素直に喜ぶことでしょう。  でも、せっかくサンタクロースにお願いのカードまで書いたのですから、もっとロマンチックにシータンを戻してあげたいと思いました。  可愛いラッピングペーパーとリボンをストックボックスの中から見つけると、佳織さんはにこにこしながら準備に取りかかったのでした。
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