ゲニタリ屋

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 骨董品店は町外れにある広い土地に建てられています。子ども部屋の窓から外を見渡しても、芝生の庭とパパの家庭菜園しか見えず、その向こうは背の高い木がいくつも植えられていました。  モタは初めて木々の向こう側を見ました。山に囲まれた町は日の出が少しだけ遅く、行く先に見える商店街の常夜灯がまだぽつぽつと点いています。まるで星が地上に落ちてきたようです。モタがしばらくそれを眺めていると、山の端がじんわりと明るくなってきました。モタは再び歩き出しました。  早い時間から開いている店はそう多くはありません。モタは肉屋を探しました。商店街の肉屋は揚げたてのコロッケや、それを挟んだサンドイッチを朝早くから売っているのです。そこで食べ物をいくつか買ってから町を出ようと思ったのでした。  モタはシャッターの上がった店を肉屋と思って入りました。ですが、店の中には赤々とした肉の塊はありません。 「お店を間違えちゃった」とモタはすぐにわかりましたが、この店もなかなかに楽しそうです。棚には、細長いチューブのような透明な入れ物がいくつも並んでいて、中には液体と茶色の何かが詰め込まれています。茶色の何かは様々な形をしていますが、どれも細長く、時々尖ったものがついています。  モタがチューブをひとつひとつゆっくりと眺めていると、店の奥から男の人がやって来ました。彼はあくびをして、眠そうな目でモタを見ました。
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