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「あと10分で店を閉めるんだが」
男の人の言葉にモタはびっくりしました。「夜に開けてるお店なんだ」とモタが言うと男の人は頷きました。
「これは何?」とモタは棚に並んだチューブを指差しました。男の人は薄っすらと笑みを浮かべました。
「ゲニだよ」
「ゲニって何?」
「ゲニはゲニだよ」
男の人は答えて店の中を見渡しました。
「生き物の体にあるんだよ」
「体にあるの?」とモタは首をかしげました。ゲニが何なのか、ますますわからなくなりました。それから少しぽっこりした自分のお腹を撫でました。
「モタにもゲニがあるのかな」
「あるよ」
男の人は頷き、また薄っすらと笑顔を浮かべます。
「ヒトの子どものゲニも少し興味がある。ところで君はどこの子だい」
「あっちの骨董品店から来たんだよ」
「なんだって」と男の人は眠そうな目を見開きました。すっかり目が覚めたようです。それからモタの背負う大きなリュックを見遣り、「ふーん、なるほど、そうか」と何かに納得したように呟きました。
「これからどこに行くんだい」
「おばあちゃんの弟の所だよ。大事なお手紙を届けに行くんだ」
「そうかそうかそうだったか。で、その弟ってどんな人なんだい」
「おばあちゃんからは聞いてない。山の向こうの町に行ってって、それだけ」
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