おやすみ、魔物があらわれる前に

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 モタは高い山に囲まれた町に住むごく普通の子どもでした。変わったところといえば、同い年の子たちよりも少し背が低くてぽっちゃりしているぐらいでしょうか。  いいえ、じつは、それだけではありませんでした。モタは一度も家の外に出たことがなかったのです。  モタの家は、古いものを売る骨董品店でした。それもただの骨董品ではありません。その品々には魔法がかかっていたのです。死んだ人と話ができるコインや未来がわかるカード、お金が増える壺など、なんでもありました。そして、それらはどれもキラキラと青く輝いていたのです。店主はモタのおばあちゃん。モタは毎日の勉強が終わった後は、おばあちゃんの店の手伝いをしていました。どこにどんな品があるか、おばあちゃんよりも詳しいぐらいでした。  いつまでも店番をしていたいぐらい、モタはこの店が大好きでした。でもそれはできませんでした。パパとの約束があるからです。モタは夜の9時にはベッドに入って眠らないといけませんでした。1分でも遅れるとパパは厳しくモタを叱りました。普段はとても優しいパパでしたが、家を出ることと夜更かしをすることは、どんなにモタがお願いしても許してはくれませんでした。
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