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ゲニタリ屋
「おばあちゃんね、欲しいプレゼントが決まったの」
ある日、おばあちゃんが言いました。モタは店のガラスのショーケースを拭くのをやめて、飛び跳ねるようにおばあちゃんに駆け寄りました。少し胸がドキドキしました。おばあちゃんは背中を丸めてモタに顔を近づけました。
「ある人に届けて欲しいものがあるの」
「お届け物?」
「そう。お手紙なんだけどね」
モタの表情が曇りました。だって、外に出ることはパパに許されていません。それはおばあちゃんもよく知っているはずです。おばあちゃんはどうしてそんなことをモタに頼んだのでしょう。おばあちゃんがモタに無茶なお願いなどするはずがないのに。
「パパとの約束を心配してるのね」
モタの気持ちを見透かしたおばあちゃんが言いました。モタは素直に頷きました。おばあちゃんはにっこり笑って「大丈夫よ」と言います。
「じつはパパにはもう相談してあるの。外に出ていいって、パパも言ってたわ」
「本当に?」
モタは声を上げました。モタがどんなに頼んでも許してくれなかった外出です。今まで何度夢に見たことか。ますます胸がドキドキしました。モタは一度深呼吸をしてから「それで、お届け物ってなんだっけ?」とたずねました。
「お手紙よ。これから書くの。すごく大事なことを書いておくから、モタに大切に運んで欲しいの」
「もちろん。大切に運ぶよ。あて先は?」
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