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早く外に出てみたくて、思わずおばあちゃんの言葉を急かしてしまうモタ。その様子も愛おしいのか、おばあちゃんは口元に手をあてて笑います。それから改まった顔つきでモタを見ました。
「じつはおばあちゃんにはね、弟がいるの」
おばあちゃんにきょうだいがいたなんて、初めて聞きました。「そうなんだ」とモタは目を丸くしました。おばあちゃんは優しく頷きました。
「その弟に、手紙を届けて欲しいの」
「モタ、おばあちゃんの弟に会えるの?」
「そういうことになるわね」
「うわあ、楽しみだなあ」
「少し遠いところにいるんだけど、頑張れる?」
「頑張れる!」
モタは元気に右手を上げました。それにおばあちゃんはゆっくりと2回頷きました。「それじゃあ、さっそくお手紙を書くわね」と店の奥に引っ込んでいきました。モタはうきうきしながら再びショーケースを拭き始めるのでした。
おばあちゃんは骨董品から7つの道具をモタに渡しました。どんなに小さな声も聞き取れるイヤーカフ、遠くの物を取り寄せられるグローブ、高く跳ぶことのできる靴、見たことのない場所でも撮影できるポラロイドカメラ、どんなに硬いものでも切れるナイフ、聞くと心が落ち着くラジオ、どれもとびきりの魔法がかかった特別な品です。モタもよく知っています。
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