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最後のひとつはモタの知らない道具でした。頑丈そうな銀色の箱に入った重い道具です。「これはまだ開けないでね」とおばあちゃんは言いました。
「本当に、もう駄目だと思ったらこれを開けてね」
モタは頷きました。モタは言いつけは必ず守る子でしたので、この箱は最後まで自分で開けることはありませんでした。だって、おばあちゃんの店の品だもの、箱を開けたら溢れ出てしまうくらいの強い魔法がかかっているに違いありません。モタはそれらの品々を大きなリュックに詰めました。
「家を出たら商店街で買い物をしなさい」とパパは言いました。モタは外に出たことがないので、自分で買い物をしたことがありません。その練習をするために、パパとおばあちゃんは敢えてモタに必要最小限の荷物しか持たせなかったのです。
モタが家を出たのは夏の朝でした。山の端から少しだけ太陽が顔を覗かせたころ、モタは自分で玄関のドアを開けました。
「やっぱりトンネルまでパパと行こうか」
そう言うパパにおばあちゃんは首を横に振りました。モタは「ひとりで行けるもん」と言いました。「そうよね」と笑顔で頷くおばあちゃん。目元で何かがキラリと光りました。それからモタの前にしゃがみこむと手を握りました。
「箱の中身以外はモタがどう使ってもいいからね。人にあげてしまってもいいのよ」
「うん。わかった」
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