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俺と律希は1か月前に恋人関係へと復帰した。以前のような曖昧な気持ちでのお付き合いではない。互いに好意を伝えた上での、しっかりとした形でのお付き合いだ。
しかし両想いであることを認めてしまった以上、俺の心には一抹の不安があるわけで。
「あのぉ……毒舌兵器の真理愛さん」
「なにさ」
「ぶっちゃけどう思います? 男同士のお付き合いって」
「それをあたしに訊く? 恋人にプロポーズを受け入れられて幸せ気分のあたしにさ」
一瞬、真理愛の言葉の意味がわからなかった。
真理愛は以前、飲み会の最中に「長年の片思いを実らせた」のだと告白した。しかしその後、誰がどう尋ねても恋人に関する情報は漏らさなかった。名前すら、かたくなに。
真理愛の黙秘が、俺が感じている後ろめたさと同じ理由からくるものだったとしたら――?
「……もしかして真理愛のお相手って女性?」
「そうだよ。来週、市役所にパートナーシップ宣誓書を出しに行くの。宣誓書が受理されれば、結婚関係に準ずる関係として社会的に認められるんだ。うちの会社はその辺りの仕組みが整っててさ。パートナーになれば家族として色んな福利厚生が使えるようになるの。結婚休暇や、家族の看護休暇もとれるんだよ」
「へぇ……そうなんだ」
「同性同士じゃ法的な家族にはなれないけどね。社会的に家族として認められることはできるんだよ。一歩踏み出す勇気があれば」
真理愛の力強い言葉は、一体誰に向けたものだったのだろう。
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