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あー、違うな、こーだったかな?と思い出すように振っていると、左方向から邪悪な気配を感じた。 ガサッと音がした瞬間、左足を軸に勢いよく槍を右から左へ振る。グギャーと悲鳴をあげ、緑色をした人形の魔物、ゴブリンが1体倒れた。後2体いるが内1体はさっきの攻撃で血を流し地面に膝をついている。 やっぱ昔みたいに一撃で倒すのは無理か……もっと力をつけなきゃだな。 右手人差し指をゴブリンに向け魔法を唱えた。 「『水円』」 バレーボールぐらいの大きさのリング状をした水が複数、ゴブリンへと勢いよく飛んでいき、首と胴体を切る。 緑色の血が飛び散りゴブリンはその場に倒れ、その数秒後キラキラと光り徐々に消えていく。残ったのは緑の宝石2個とゴブリンの遺体が1体。 魔物は遺体で残ったり、宝石で残ったりする。 魔物を倒すと現れる宝石は、魔石と呼ばれるもので、まだ解明されていないが、魔法を使う魔物の核ではないかと言われている。現にこの魔石には微力だが魔力がある。とはいっても、一度倒され魔石になったものはどんなに魔力を込めようが魔物にはならない。そこまでは国も研究済み。 まぁ、何にせよこの魔石は高く売れる。輝きが綺麗だと平民から貴族まで人気があるので需要があるのだ。 俺はその魔石と遺体を拾い、インベントリへ。 『どうだ、練習になったか?』 「あぁ……ん?そういやぁ、ここベルの泉だよな?ベルが結界張って魔物は来れないはず……もしかして……」 ニヤニヤと笑うフウマ。 『相手がいないと練習にならないだろう?ちょっくら魔物を転移してみました』 どや顔で言うフウマの肩を、ベルの手がポンと置かれる。物凄い黒い笑顔で。目が笑ってない。 『フウマ、ちょーっとお話しましょうか?』 『えっ、いや、ベルさん、その笑顔めっさ怖いんですが!』 『問答無用!』 輪になった水を操り、器用にフウマの両手を拘束し、そのまま泉に沈めるベル。 『うー、ごほっ、べ、ベルさん、ゆるじでー』 『うふふふ』 うん、相変わらず仲いいな二人とも。 暫くかかりそうなので俺は再び槍を振るうことにした。
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