11

1/1
前へ
/68ページ
次へ

11

「よし、これぐらいでいいか」 そろそろ体もいい感じになってきたので行くか……と、別れを告げるためベル達の方を向くと、温かい目で見られていた。 何だか恥ずかしいな。 『ジン、もう行っちゃうのね』 「ん」 寂しそうな笑顔で俺の頬を両手でそっと包むと、額とおでこが合わさる。 『ジンに水の加護を』 チュッと額にキスをされ、ふわりと暖かい何かが全身を包み込む。俺の魔力とベルの力がまざわり一つになっていくのを感じた。 『ジン、いつでも呼んで。待ってるわ』 ふわりと優しく微笑みながら離れていくベルと入れ代わりに、今度はフウマから右手をやさしく握られる。 『ジンに風の加護を』 チュッと右手の甲にキスをされると、ベルと同じく暖かい何かが全身を包み、俺の魔力とフウマの力がまざわり一つになった。 『ジン、無茶するなよ。何かあれば真っ先に俺達を呼べ。どうにかしてやるから』 格好つけるようににっと笑うフウマを、離れていたベルが『邪魔よ』っと押し退け、涙目でぎゅっと俺に抱きついてきた。 『ジン、いってらっしゃい。気をつけて』 「いってきます」 泣いているベルをぎゅっと抱きしめると、ふわりといい香りがした。 落ち着く、離れがたいな……。 ベルがそっと離れていくと、寂しいと言う言葉が胸に突き刺さる。 俺の顔を見たベルは目をパチクリさせた後、『ふふふっ』と笑うと、子供を安心させるような優しい表情で微笑んだ。 『ジン、人の世界が嫌になったら、いつでも私達の所に戻ってきなさい。いつでも待ってるから』 ベルの言葉に思わず涙がこぼれる。 「うん、ありがとうベル。……また来てもいい?」 『もちろんよ!歓迎するわ』 破顔するベルとちょっと苦笑いのフウマに見送られながら、俺は泉を後にした。 
/68ページ

最初のコメントを投稿しよう!

34人が本棚に入れています
本棚に追加