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「よし、これぐらいでいいか」
そろそろ体もいい感じになってきたので行くか……と、別れを告げるためベル達の方を向くと、温かい目で見られていた。
何だか恥ずかしいな。
『ジン、もう行っちゃうのね』
「ん」
寂しそうな笑顔で俺の頬を両手でそっと包むと、額とおでこが合わさる。
『ジンに水の加護を』
チュッと額にキスをされ、ふわりと暖かい何かが全身を包み込む。俺の魔力とベルの力がまざわり一つになっていくのを感じた。
『ジン、いつでも呼んで。待ってるわ』
ふわりと優しく微笑みながら離れていくベルと入れ代わりに、今度はフウマから右手をやさしく握られる。
『ジンに風の加護を』
チュッと右手の甲にキスをされると、ベルと同じく暖かい何かが全身を包み、俺の魔力とフウマの力がまざわり一つになった。
『ジン、無茶するなよ。何かあれば真っ先に俺達を呼べ。どうにかしてやるから』
格好つけるようににっと笑うフウマを、離れていたベルが『邪魔よ』っと押し退け、涙目でぎゅっと俺に抱きついてきた。
『ジン、いってらっしゃい。気をつけて』
「いってきます」
泣いているベルをぎゅっと抱きしめると、ふわりといい香りがした。
落ち着く、離れがたいな……。
ベルがそっと離れていくと、寂しいと言う言葉が胸に突き刺さる。
俺の顔を見たベルは目をパチクリさせた後、『ふふふっ』と笑うと、子供を安心させるような優しい表情で微笑んだ。
『ジン、人の世界が嫌になったら、いつでも私達の所に戻ってきなさい。いつでも待ってるから』
ベルの言葉に思わず涙がこぼれる。
「うん、ありがとうベル。……また来てもいい?」
『もちろんよ!歓迎するわ』
破顔するベルとちょっと苦笑いのフウマに見送られながら、俺は泉を後にした。
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