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あの後、街に強制連行され、色々説教された。 「魔物は危険だ」から始まり、「アレは睡眠魔法を使ってくるから一人では戦うものじゃない。それになぁ、アイツらは戦ってる途中で仲間を呼ぶんだ。今度会ったら、絶対逃げろ」、「あ?ギルドに入りたい?何言ってやがる。お前何歳だ?ギルドは16歳からだ!」などなど。 一通り説教が終わった30分後。 半泣き状態の俺は、やっと帰れる!と急いで腰を上げた瞬間、腕を組みをしたアークから「ちょっと待て」と引き止められた。 「えっ、まだ何かあるの……」 無言で見つめられ仕方なくまた座った。 「ジン、家はどこだ?送ってやる」 「……大丈夫です」 「どこに住んでるんだ?」 「……」 言えない。森に住んでいるなんて。ベル達にも迷惑をかけたくない。 これ以上何も言いたくないと黙って俯いていると、アークが深いため息をついた。 「ジン、もし、行く宛がないなら孤児院を紹介してやれるが……」 「いらない」 「はぁ……。ジン、どこで寝てるか知らねぇが生きていくにはお金が必要だ。寝床にメシに衣服。全てに金が要る。どうするんだ?」 「魔物倒して稼ぐ」 「言っただろ。ギルドは16歳からだ。ちなみに何かを売るにも16歳以上からだ」 アークの言葉に呆然とした。 「……俺は16歳」 「嘘をつくな。誤魔化してもギルド登録の時にばれるぞ」 「……アークさん、俺みたいな子供が、魔石を売るには、どうしたらいいんですか?教えてください」 座ったまま深く頭を下げる俺の横に、アークが近づいて来たのが気配でわかった。頭上に手が伸びてくるのを感じ、思わず殴られると思い、両腕を上げ頭を守るが、衝撃が来ない。 「……ジン」 すぐ真横から声が聞こえ、恐る恐る目を開けると、膝をついているアークと目があった。その表情はどこか悲しそうに見えた。 「ジン。魔石を買い取ることができるのは、冒険ギルドや生産ギルド、後は国の許可が降りている雑貨店だ。だが、16歳以上に限る。成人してないやつが、魔石を売ることは、法律上できないことになっている」 目を合わせ、真面目な表情で俺を見るアークに、嘘はついていないのだとすぐにわかった。 両手でぎゅっと、ボロボロのズボンの生地を強く握りしめた。 だからといって、孤児院は嫌だ。今の生活が、ベル達の側がいい。食料に関しては金がなくても生きていける。森で狩って取って食べればいい。ただ、服は無理だ。買うためにはお金がいる……。 「アークさん、魔石を少しでいいので買い取ってもらえませんか?正規の半額、いや、3分の1でいいので!半年に一度でいいので、お願いします!」 「……ジン、何で法律で禁止されてるのかわかるか?」 首を左右に横に振ると、ポンポンとアークの大きな手が頭に乗る。 「過去にな、ガキが金欲しさに無茶をして、魔物狩りで命を落としたことが何度もあったんだ。その残骸を見てコレはダメだと悟った国が、法律上で禁止した。子供達を守るためにな」 はぁ?守る?大人が子供を……。ははは、俺がいた国は子供に厳しかった。親や親戚がいなければ問答無用で奴隷みたいに働かされ、人権なんてものはなくなる。 この国の子達は……幸せ、だな。でも、俺はこの国で生まれたらしいが、戸籍もない、存在しない子供だ。それに、孤児院で、また殴られたりするかもしれない。 「ジン?大丈夫か?」 両腕を掴みガタガタと震え出す俺の背中をアークが優しく撫でるが、震えは止まらない。 怖い。痛い思いを、苦しい思いをするぐらいなら、いっそうのこと……。 「死に……たい……」 無意識に出た小さな声と同時に暖かいものにぎゅっと包まれたかと思うと、フワリと体が浮いた。 「!」 感じたことのない浮遊感に慌てて近くのものに掴まる。 「高い……」 視線が高い。手をのばせば天井に届きそうだ。どうやら、小さい子がよくされている、片手抱っこというものをされているみたいだ。 一度もされたことのない片手抱っこに、ビックリして固まっていると、掴まっていたもの、がクククと笑い出す。我に返り声の方向に振り向くと……ニヤッと笑うアークが目の前にいた。何かを決心したような、吹っ切れたような強い眼差しに、俺は首を傾げる。 「……アークさん?」 そんな俺をもう片方の手でグシャグシャと撫でる。 「よし、決めた!と言うことで、ジン。今日から俺の息子だ」 「…………はぁ?」 マジ、意味わからん。 ってな感じで、突然家族になった俺達。 その後、色々、本当に色々あったが、充実した日々を過ごした。……まぁ、時間があればまた語ろうと思う。 さておき、アークと暮らした日々は俺のかけがえのない物となった。
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