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ふわふわする。まるでハンモックに揺られているかのように気持ちがいい。まだ、起きるのも勿体ない気がする。 「ギ……、しん……な……や……す!」 「わざ……じゃ……。つ……な」 「つい……な……よ!」 まだ寝ていたいのに、男性の争う声がする。 「ん……」 重たい目蓋を上げると知らない天井が目に映る。 ここどこだ?騒がしい方へ目をやると、アークとポチ……じゃなかったワンダーさんがいた。 「まだ、16歳の子供なんですよ!ギルマスにとっては赤子と同然なんです!無茶するから骨折れてたんですからね!もう、反省してください!」 バーンと扉を強く締め、出ていくワンダーさん。アークは頭をポリポリとかいて、ばつが悪そうな顔をしていた。 「アーク、さん?」 「おぅ、ジン、目覚めたか。悪かったな。大丈夫か?」 ゆっくり体を起こし、ベッドから立ち上がった瞬間、全身の痛みで「いっ」と声に出た。 慌ててアークが駆け寄り、ゆっくりベッドに座らせてくれた。 「ジン、急に動くな。どこが痛い?」 心配そうに覗き込むアークには申し訳ないが違うんだ。この痛みは……。 「……き……う」 「えっ?」 「筋……肉……痛」 「は?筋肉痛?あー、身体強化か」 コクコクと頷くと、アークが治癒魔法をかけてくれた。ほのかに暖かくて気持ちがいい。痛みも少し治まった気がする。 「はぁー、ありがとうござい……」 言い終わる前に、ぐぅぅぅぅと腹の虫が鳴った。 「……くっ、ククク」 はず!そう言えばこっちに来てから飯食べてないわ。今何時だ? 壁に掛かっている時計を見ると、針は8時過ぎていた。この世界は1日32時間。時計は一周16だから、ざっと計算して前の世界の夜18時ぐらいだ。 「あー、すいません。……昼、食べてなかったんで」 「ククク、そっか。怪我の詫びに夕食を奢ろう。動けるか?」 体を少し動かしてみる。うん、さっきよりいい気がするが、一歩歩くとズキッと痛みが走る。 「すまん。俺は治癒が苦手でな。下にいる奴に治癒かけてもらうか?」 「だ、大丈夫です。だいぶ楽になったのでっ……ふぁ!」 フワリと体が浮いたかと思うと、上半身のバランスが崩れそうになり慌て近くのものに掴まった。 「……高い」 視線が高い。腕を伸ばせば天井に届く高さに、懐かしさを覚え思わず、笑いそうになる。今俺は小さい子がよくされている片手抱っこをされていた。 掴まっていたもの……アークがクククと笑い出す。アークを見ると、ニヤッとイタズラが成功して嬉しそうに笑っていた。 あぁ……父さんは本当に変わらないな。 あの時は首に掴まったけれど、今掴まっているのはアークの頭。何だか可笑しくなって思わず笑う。 「ふはっ」 「よし!ジン、飯食いにいくぞ!」 抱っこしたまま連れていってくれるらしい。恥ずかしい気もするが、嬉しいのでこのままでいたい。 「おー!」 アークもノリノリの俺が可笑しいのかクククと笑っている。 「何か食べたいのがあるか?」 「うーん、アークさんの食べたい料理で」 「じゃぁ、ギルド飯スペシャルだな」 「えー、あれ、めっちゃ美味しいけど量が多いよ。俺は無理!」 「そうか?冒険者なら……」 「"完食してこそ一人前!"、でしょ」 ニヤッと笑う俺に、アークが目をキョトンとさせる。 「冒険者の父さんがよく言ってたセリフだから」 「へー何だか親しみを感じるな」 「うん、絶対、父さんと気が合うよ」 だって、同一人物だからね。
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