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コンコンと礼儀正しくノックをしたが返事が帰ってこない。 うむ、どうしよう。ギルマスいないのかな?いったん家に戻るか? 悩んでいると後ろから声が掛かったので振り向いた。 「おぅ、ジン、お疲れ様」 「アークさんもお疲れ様です」 「お前が、ジンか?」 声の方向、アークの後ろの方を見ると、白銀の髪を1つに束ねた、赤い瞳のほっそりとしたイケオジがニヤッと笑いながら近付いていた。年齢はアークよりも年上に見える。 あれ?どこかで……。 男は俺の頭を数回撫でた後、脇に両手を入れてひょいっと上に持ち上げた。 「おぉ、軽!」 笑いながらその場でクルクルと一緒に5回転した後、空中に投げられ、危なげもなくキャッチされる。 「どうだ?楽しいか?」 楽しい?これが? 俺は楽しいの意味がわからず、コテと首を傾げた。 すると、男性は目を大きく見開いて、アークの方へ振り返る。 「アーク!コレ、可愛いな!持って帰っていいか?」 「ダメに決まってるだろうが!アホ兄貴!」 あぁー!そうだ、思い出した!この人、アークのお兄さんだ。 彼はアークの腹違いの兄でアーガンという。つまり、前世のジンにとっては義伯父さん。たまに普通の人とオーラーがちょっと違うみたいな、上品?気品?な雰囲気がある。自由気ままで、たまにふらりと来て、ふらりと帰っていく不思議な人だ。 驚いて固まっている俺をアークが慌ててアーガンから引き剥がし、後ろに隠した。 俺はぎゅっとアークの袖を握り、アークを盾にしたまま、チラリと覗く。 「かわ!本当に16歳か?10歳といっても……うっ、あー、失礼だったな、すまん」 じろりと睨んでいたら、申し訳なさそうに謝ってきた。 「別に……」 失礼なのは今さらだ。前世の時からアーガンは変わらない。それにこの世界で俺が小さいのは、言われなくてもわかっている。 軽く拗ねてるとアーガンが俺の前に跪き、両手を握りながら目を合わしてきた。 「ジン、悪かった。詫びに好きなものを奢らせてくれ。何が好きだ?」 好きなものと聞かれて思い出したのは、前世で好きだった『バニラ』というお菓子屋のチョコレートケーキ。程よい甘さに濃厚のカカオの苦味が癖になるケーキだ。よく、アーガンがお土産にと持ってきてくれたお菓子だった。 「……美味しいチョコケーキ」 「チョコ、ケーキ……あぁ!了解した。おすすめのチョコケーキがある。今度来た時に持って来よう。それでいいか?」 頷くと嬉しそうに微笑んだ。
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