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”ある人”の面影がそっと、琴子の心中を陽だまりのようにそっと照らしていく。
そうだ。未練……あるじゃないか。
貸して、なんて…忘れた、なんて…
困ってる、なんて…
一言も口に出していないのに、いつの間にか気付いて、漢字ドリルを貸してくれた宮瀬くんに琴子はまだ…
”言えていない”
琴子は意を決して言った。
「漢字ドリルの……お礼を言いたい、です」
「それがお前の未練、か?」
瞼の奥に「忘れたのー?」と意地悪そうに琴子を見つめる宮瀬くんが浮かんできて、
気付いたら「はい。言いたい…。絶対、言いたい、です」と口走っていた。
「分かった」
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